難聴

ヘルツ(Hz)とは?音の“高さ”を理解するための基礎知識

Hz(ヘルツ)って何のこと?

dB(デシベル)とは違うの?

 聴力検査やオージオグラムの説明で必ず出てくる「Hz(ヘルツ)」。

 耳の聞こえを理解するうえで欠かせない概念ですが、「音の大きさ(dB)はなんとなく分かるけれど、ヘルツって何?」という方は多いものです。

 この記事では、ヘルツの基本から、ヒトの聞こえにとって重要な周波数帯、そしてスピーチバナナとの関係までを、専門的な視点で整理します。

  • ヘルツ(Hz)は音の“高さ”を示す単位で、1秒間の振動回数を表す
  • 数値が小さいほど低音、大きいほど高音になる
  • 聴力検査では主に250〜4000Hzを測定し、どの高さの音が聞こえにくいかを詳細に把握する
  • 会話音は500〜4000Hzに集中し、この周波数帯をどれだけ聞き取れるかが言語発達において不可欠

 難聴の基本的な仕組みを先に知りたい方は、こちらも記事も参考になります。

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ヘルツ(Hz)とは?

 ヘルツ(Hz)とは、音が1秒間に何回振動しているかを表す“周波数”の単位です。

 振動回数が多いほど音は高く、少ないほど低く聞こえます。

  • 250Hz … 太鼓のような低い音
  • 1000Hz … 会話の中心
  • 4000Hz以上 … サ行など明瞭度に関わる高い音

 ヒトが感じ取れるのは 約20〜20,000Hz の範囲。

 ただし、言葉の理解に必要なのはその一部だけです。

 音の高さ(Hz)とあわせて、音の大きさ(dB)について理解しておくと、聴力検査の見方がより分かりやすくなります。

 音の大きさ(dB)について、詳しくはこちらの記事を参照してください。

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聴力検査ではなぜヘルツを見るの?

 聴力検査では、音の大きさ(dB)だけでなく、音の高さ(Hz)ごとの聞こえ方を確認することが重要です。

 それは、聞こえにくさは高さによって異なることが多いためです。

  • 低音は聞こえるのに高音だけ弱い
  • 高音は聞こえるのに低音が落ちている

 など、周波数ごとに特徴が違います。

会話音が多く分布する帯域

 ヒトの会話は 500〜4000Hz に集中しており、この帯域が落ちると意味の理解に影響します。

 赤ちゃんや子どもの“聞こえのサイン”については、こちらの記事で詳しく紹介しています。

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難聴の種類との関係

  • 感音難聴 → 高音(2000〜4000Hz)が落ちやすい
  • 伝音難聴 → 低音域が弱くなりやすい

 そのため、検査では125〜8000Hzの幅を測り、どの高さが弱いかを可視化します。

周波数をイメージしやすくするために

 聞き取れる高さの範囲は、生き物によって大きく異なります。

  • 人間:約20〜20,000Hz
  • 犬:〜40,000Hz
  • 猫:〜60,000Hz
  • イルカ:100,000Hz以上で会話
  • コウモリ:100,000〜150,000Hzの超音波で定位

 この違いを見ると、音の“高さ”には大きな個性があることが理解しやすくなります。

スピーチバナナとは?

 人の会話音は、低い母音から高い子音まで幅広く分布していますが、実際には 500〜4000Hz の範囲に多く集中しています。

 この“会話に必要な音の高さと大きさ”を地図のように示したものが下の写真の「スピーチバナナ」です。

 スピーチバナナについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。

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スピーチバナナの解説

 黄色い領域が、会話に使われる母音・子音が分布する部分です。

  • 250〜500Hz(低音):母音「あ・う・お」
  • 1000〜4000Hz(中〜高音):子音(サ行・タ行・カ行)が集中
  • 4000Hz以上(高音域):明瞭度を左右する重要な音

 このため、高音域が落ちると、言葉がぼやけたり聞き違いが増えることがあります。

 写真の中の▲マークは、次女そらの聴力(補聴器装用時・裸耳)です。

 このように聴力検査による聴力をスピーチバナナに重ねると、本人がどの音が聞こえていて、どの音が聞こえにくい(聞こえていない)のか一目で分かります。

実例:高音域が落ちている場合の聞こえ

 トリケラ家の長女とうこ・次女そらの聴力では、2000〜4000Hzを中心とした高音域に低下が見られます。

 この帯域は子音が多いため、

  • 「さ」「た」などの区別がつきにくい
  • 語尾が聞き取りにくい
  • 雑音環境で特に聞こえの負担が大きくなる

といった特徴があります。

 補聴器装用で20〜40dBまで改善しても、周波数ごとに改善度が異なるため、高音域には課題が残りやすいことがあります。

まとめ

 ヘルツ(Hz)は、音の“高さ”を理解するうえで欠かせない指標です。

 聴力検査ではどの高さが聞こえにくいかを丁寧に評価することで、言語発達や日常生活の聞き取りへの影響を正確に把握できます。

 スピーチバナナは、会話音の高さと大きさを視覚的に整理した重要なツールであり、周波数ごとの聞こえ方を理解するのに非常に有効です。

 お子さんがどの音域が苦手なのかを把握して、ことばの発達の手助けをしていきましょう。

ヘルツとデシベル、違いをしっかりおさえておこう!