子どもの難聴と障害者手帳|交付の基準・必要書類・支援内容をわかりやすく解説

我が家の難聴児は二人とも手帳の対象外なので、今回の記事は一般的な話になります!
子どもの難聴と障害者手帳は、勘違いされやすいテーマです。
「重度じゃないと手帳はもらえない?」と迷う保護者は多いけれど、実際は聴力レベルの基準によって判断されます。(参考:厚生労働省「身体障害者障害程度等級表」)
この記事では、この3つのポイントをわかりやすく解説します。
- 手帳交付は「難聴の程度」で決まり、重度だけが対象ではない
- 等級は「良い耳の平均聴力レベル」で判断され、70dB以上が目安
- 手帳があると、補聴器の購入助成や税控除などの支援が受けられる
Contents
障害者手帳(身体障害者手帳)とは?
障害者手帳(身体障害者手帳)は、身体機能に障害がある人が必要な支援を受けやすくするための制度です。
根拠となる法律は身体障害者福祉法で、難聴はこの中の「聴覚障害」に該当します。
子どもの場合でも制度のしくみは大人と同じで、聴力の程度に基づく明確な基準で交付の可否が判断されます。
そのため、「軽度だから対象外」「子どもだからもらえない」という単純な判断ではなく、耳鼻咽喉科での検査結果(平均聴力レベル)が必要になります。
法の構成と該当部分
- 身体障害者福祉法の冒頭(第1条〜)では、「身体障害者の福祉の増進」「自立と社会参加の促進」が目的として定められている。
- 具体的な認定基準は法律本文ではなく、「身体障害者障害程度等級表」で規定されている。
- 聴覚障害はこの等級表に「聴覚または平衡機能の障害」として分類され、2級〜6級まで等級が定められている。
参考資料
・身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)
難聴の等級はどう決まる?(厚労省の等級表より)
難聴による身体障害者手帳の等級は、「良い方の耳の平均聴力レベル」に基づいて決まります。
等級の基準
- 2級:100dB以上
- 3級:90dB以上
- 4級:80dB以上
- 6級:70dB以上
つまり、70dB以上という値が、手帳交付の目安のラインになります。
「軽度・中等度・高度・重度」という一般的な表現ではなく、良い方の耳の平均聴力レベルという“数値”で判定されることがポイントです。
軽度・中等度・高度・重度の違い|子どもの難聴の特徴と支援をわかりやすく解説
また、難聴には種類がいくつかあります。
子どもの難聴のタイプについて知りたい方は、こちらの記事でも解説しています。
純音聴力検査とは?(ABR・ASSRとの違いも含めて解説)
純音聴力検査は、いろいろな高さ(周波数)の単純な音(純音)を聞かせて、どれくらい小さな音まで聞こえるかを測る検査です。
手帳で使われる「平均聴力レベル(dB)」は、すべてこの検査をもとに算出されます。
どうやって測るの?
- 防音室でヘッドホンをつける
- 「ピー」という音を右耳・左耳それぞれに聞かせる
- 周波数と音量を変えながら、聞こえたら合図をする(手を挙げる・ボタンを押す)
- “もっとも小さくて聞こえた音=閾値(dBHL)” を記録する
日常の聞こえ方に近い「本人の反応」を見る検査です。
小さい子の場合
乳幼児は手を挙げるのが難しいため、
- 積み木を入れる
- おもちゃが動く方向を見る
- 音に反応した体の動きを見る
などの“行動で示す方式(COR など)”で純音に近いデータをとります。
ABR・ASSRではダメなの?
難聴の検査には ABR(聴性脳幹反応)や ASSR がありますが、これらは脳波や生理反応から「聞こえているはずの音」を推定する検査です。
赤ちゃんでもできる大切な検査ですが、“本人が聞こえたときに示す反応そのもの”を測っているわけではありません。
一番大事な違い
ABR・ASSR
- 脳の反応を使う
- 推定の聴力(予測値)
- 意識的な「聞こえた!」の反応ではない
純音聴力検査
- 本人の反応で測る
- “実際に聞こえた瞬間”をデータ化
- 日常生活の聞こえに近い
だから、手帳の判定の基準になるのは純音聴力検査です。
ただし、ABR・ASSRが不要というわけではありません。
乳児期や集中が続かない時期、発達段階で純音検査が難しい時期には、ABR・ASSRがとても大切な参考資料になります。
補聴器をつけても聞き取りにくい音や補聴器を着けた子どもの聞こえの限界について知りたい方は、こちらの記事でも解説しています。
補聴器をつけても全部の音は聞こえない!|子どもの“聞こえ”の限界をわかりやすく解説
手帳があると受けられる支援
障害者手帳(身体障害者手帳)を取得すると、自治体の制度や国の税制など、子どもの成長と家族の生活を支えるさまざまな支援が受けられます。
① 補聴器購入費の助成(自治体)
障害者手帳を持つと、補聴器の購入費用の一部または全額が助成されます。
- 支給対象:身体障害者手帳(聴覚障害)を所持していること
- 助成額:自治体が定める「補装具費支給制度」に基づく
- 申請場所:市区町村の福祉課
- 対象補聴器:厚生労働省が定める「補装具」として認められている機種
※ 出典:厚生労働省「補装具費支給制度の概要」
② 税制上の控除(所得税・住民税)
障害者控除の対象となり、所得税・住民税が軽減されます。
- 本人または扶養親族が障害者の場合に適用
※ 出典:国税庁「障害者控除」
③ 公共交通機関の割引
地下鉄・バス・私鉄・JRなどで運賃割引を受けられることがあります。
子どもの場合、介護者となる保護者も対象になる場合があります。
④ NHK受信料の減免
条件を満たせば、NHK受信料が全額または半額免除されます。
※ 出典:NHK「受信料免除の対象となる方について」
⑤ 施設利用料の割引や支援サービス
自治体によっては、公共施設の割引や児童発達支援、相談支援など、地域サービスが利用できる場合があります。
支援内容は自治体によって差があるため、手帳が交付されたら市区町村の福祉窓口で一覧を確認することが大切です。
申請の流れ(子どもの場合)
子どもの障害者手帳は、次の手順で申請します。
1 指定医のいる耳鼻咽喉科を受診する
純音聴力検査や必要に応じたABR・ASSRなどの検査を行います。
2 診断書・意見書と必要書類を準備する
指定医が作成した身体障害者診断書・意見書を含む書類を揃えます。
3 市区町村の福祉窓口で申請する
福祉課で手続きを行います。
4 自治体による審査
等級表と診断書に基づき、自治体が審査します。
子どもの場合、純音検査が難しい時期は、ABR・ASSR・音場検査など複数の検査を組み合わせて判断されることがあります。
5 障害者手帳の交付
認定されると手帳が交付されます。
補聴器助成や利用できる支援について案内されることもあります。
まとめ
障害者手帳の交付は、重度・軽度といった表現ではなく、良い方の耳の平均聴力レベルという明確な数値で判断されます。
純音聴力検査が基本で、必要に応じてABR・ASSRなどを補助資料として組み合わせながら、指定医と自治体が総合的に評価します。
手帳を取得すると、補聴器の助成や税制優遇、交通割引など、子どもと家族の生活を支える支援を受けることができます。
制度の仕組みを知り、必要なときに適切に活用できることは、子どもの成長を支える大きな力になります。
この記事では、厚生労働省の資料にもとづいて、難聴と障害者手帳の関係をわかりやすくまとめました。
不明な点があるときは、指定医や自治体の福祉窓口に相談しながら進めていくことをおすすめします。
申請方法などは住んでいる自治体によって違うから、しっかり調べて手続きをしていこうね!





