難聴児と童謡|なぜ難聴児に童謡がすすめられるのか?根拠からわかりやすく解説

お母さん、とうこちゃんには童謡をたくさん聞かせてあげてね!
療育に通い始めたころ、先生からそう言われて、家でアレクサから毎日流していた時期がありました。
でもそのときは、正直
どうして童謡なの?
という疑問もありました。
実は、音楽なら何でもいいわけではなく、難聴児には童謡が特に相性が良い理由がきちんとあるんです。
この記事では、「なぜ難聴児に童謡がすすめられるのか?」をわかりやすく解説します。
- 童謡はメロディやリズムが明確で、難聴児でも“音の形”をつかみやすい
- くり返し構造が多く、語彙の定着や言葉の理解を助ける
- 視覚(絵本・手遊び)と組み合わせることで、聞こえと意味が結びつきやすくなる
難聴児に童謡がすすめられる理由
メロディとリズムが明確で“聞き取りやすい”
童謡は、子ども向けに
- 音域が広すぎない
- テンポが一定
- メロディラインがシンプル
という特徴があります。
補聴器を通した音は、どうしても音の一部が聞こえにくかったり、強調されたりします。
その中でも童謡は“音の規則性”がわかりやすく、難聴児がリズムや音の流れをつかむ練習に向いています。
特に乳幼児期は、こうした規則性の積み重ねが、後の「聞き取りの土台」になります。
くり返し構造で“語彙が定着しやすい”
童謡の多くは、同じフレーズをくり返す構成になっています。
くり返しは、言語発達の初期段階で非常に効果的で、難聴児が“言葉と音”を結びつけて覚える助けになります。
補聴器越しでもくり返しがあると、聞き取れなかった部分がだんだん補われていき、理解しやすくなるというメリットがあります。
難聴児は特に高音域の子音が聞き取りにくいことがあり、その特徴が語彙の入り方や発音に影響することがあります。
この「語尾落ち・子音の抜け」については、こちらの記事で詳しく解説しています。
語尾の「す」が聞こえにくいとどうなる?|難聴児の発語に起きやすい変化を実例で解説
視覚と合わせられる“マルチモーダル学習”と相性が良い
とある研究では、難聴児の学習は、視覚情報が加わることで理解が大きく深まりやすいことが指摘されています(例:Marschark & Hauser, 2012)。
童謡は
- 手遊び歌
- 絵本との組み合わせ
- 動画や動作とセット
など、視覚と聴覚を同時に使いやすい特徴があります。
これはまさに、難聴児の得意な学び方と一致しています。
視覚が入ることで理解が伸びやすいという特徴は、難聴児の“アートの学び方”にも共通しています。
どのように視覚が言葉の理解を助けるのかは、こちらの記事でも紹介しています。
絵が得意な難聴児が多いのはなぜ?|視覚の強みと才能の伸ばし方
日本語のリズム・抑揚をつかむ練習になる
童謡は、母語の特徴である
- モーラ(拍のリズム)
- 一定の抑揚
- はっきりした区切り
が強調されています。
補聴器を通した音声でも、これらの抑揚やリズムの情報は比較的つかみやすいとされ、自然な日本語を身につける手がかりになります。
童謡 × 難聴児の注意点
「流しっぱなし」だと効果が薄くなることも
童謡は聞き取りの土台づくりに役立つ一方、ただ長時間流すだけだと、子どもが音に慣れてしまい、言葉としての意味が入りにくくなることがあります。
短時間でも「一緒に歌う」「手遊びをする」など、能動的な関わりがあると理解が深まりやすいです。
テレビの音楽は“雑音”が多く聞き取りづらい
テレビは効果音・セリフ・BGMが重なるため、補聴器越しでは肝心なメロディや歌詞が聞き取りにくくなることがあります。
童謡を取り入れるなら、テレビではなくスピーカーやスマートスピーカーのほうが、子どもにとって聞き取りやすい環境になります。
発語が伸びるかどうかは「個人差が大きい」
童謡と発語の関係は「伸びる子が多い」という臨床的な傾向はあるものの、研究レベルでは明確な因果関係までは示されていません。
期待しすぎず、“聞こえの土台を育てるもの”として捉えるのが安心です。
音量設定には注意が必要
補聴器には、小さな音をその子が聞こえるレベルまで自動で増幅する仕組みがあります。
逆に、大きすぎる音は補聴器が「危険な音」と判断して圧縮してしまい、音がゆがんだり、歌詞が聞き取りにくくなることがあります。
音量は「少し小さいかな?」と感じるくらいが自然で聞きやすいことが多いです。
トリケラ家の体験談
長女とうこの療育に通い始めたころ、先生から童謡がおすすめだとアドバイスを受けました。
とうこはまだ聞こえの経験が少なく、言葉のリズムやメロディに触れる機会を増やすことが大切だという説明を受けました。
それから、家ではアレクサで童謡を流すだけでなく、本屋さんで童謡の歌詞が載っている絵本を買ったり、童謡のCDを借りてきて音源をiPhoneに入れたりして、隙間時間に一緒に聞くようにしていました。
絵本を見ながら
これがどんぐりだね、どんぶりこだね
お池にはまっちゃったね
と歌詞に出てくる言葉を指さしながら歌ったり、“キラキラ星”では手をひらひらさせたり、“ぞうさん”では鼻の真似をしたりして遊んでいました。
音に合わせて動くとうこの姿は本当に可愛くて、童謡が「聞こえ」と「意味」をつなぐきっかけになっていたのを感じます。
家庭でできる童謡の取り入れ方
絵本と一緒に歌う(いちばん効果的)
本屋さんには、童謡の歌詞がそのまま載っている歌絵本がたくさんあります。
こうした絵本を見ながら歌うと、視覚と聴覚が同時に働き、言葉の意味がつながりやすくなります。
手遊び歌を一緒にする
「キラキラ星」で手をひらひらさせる、「ぞうさん」で鼻の真似をするなど、動作と言葉がセットになると音のイメージがより強く残ります。
生活の中の短い時間でOK
朝の準備、遊びのはじまり、帰宅して最初の数分など、短い時間でも十分です。
スピーカーやスマートスピーカーを活用する
音量は「少し小さいかな?」と感じるくらいが自然で聞きやすいことが多いです。
補聴器は小さな音を適切に増幅してくれる一方、大きすぎる音は圧縮してしまい、音がゆがむ原因になります。
楽しむことがいちばん大切
童謡は“聞こえの訓練”ではなく、親子で楽しみながら続けられるのが一番です。
笑顔で歌ったり、動作をまねしたりすることで、音・言葉・意味が少しずつつながっていきます。
まとめ
童謡は、難聴児にとってメロディやリズムがわかりやすく、語彙の定着を助ける音環境です。
視覚と組み合わせやすく、歌絵本や手遊びなどと合わせることで、聞こえと意味がつながるきっかけになります。
家庭では、短い時間でも構わないので、絵本を見ながら一緒に歌う・手遊びをする・適正な音量で流すなど、無理なく取り入れることが大切です。
童謡は「特別な訓練」ではなく、親子で楽しみながら続けられる “音と言葉の土台づくり” のひとつです。
歌いながら一緒に遊ぶという「遊び」の一環として取り入れてみてね!







