トリケラ家の長女とうこ・次女そらは、2人とも感音性難聴だよ!

 難聴には「伝音性」「感音性」「混合性」という3つの種類があります。

 これらは単なる名前の違いではなく、耳のどこで音が止まったり、歪んだりしているのかという“場所”によって決まります。

 そのため種類が違うと、子どもが日常で感じる困りごとも、補聴器で届く音の質も大きく変わります。

 仕組みを正しく知っておくと、検査結果の意味が理解しやすくなり、これからの支援や環境づくりの方向性も見通しやすくなります。

 この記事では、「耳の構造」から見た難聴の3種類の違いを、図解イメージを交えながらわかりやすく解説します。

 前回の入門記事では触れきれなかった “理由の部分” を、今回はていねいに深掘りしていきます。

  • 難聴の3種類(伝音性・感音性・混合性)は、耳のどこで音が止まる/崩れるかという“場所”で決まる
  • 種類によって、日常の聞こえ方・困りやすい場面・補聴器との相性 が大きく変わる
  • 仕組みを理解すると、検査結果の意味や、家庭や保育園・学校での支援の方向性がわかりやすくなる

 基本の違いについては、前回の記事「難聴の種類(伝音性・感音性・混合性の基礎)」でまとめています。

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伝音性難聴|“音が耳の奥まで届きにくい”タイプ

どこで問題が起きているのか?

 伝音性難聴は、外耳〜中耳のどこかで音の通り道が弱くなることによって生じる難聴です。

 耳の構造でいうと、

  • 外耳(耳の穴〜鼓膜)
  • 中耳(鼓膜〜耳小骨)

 このどこかで音の振動が十分に伝わらなくなる状態です。

 本来、外耳と中耳は音を効率よく増幅して内耳に届ける“通り道・拡声器”の役割を持っています。

 ここでつまずくと、音自体が小さく届くという特徴が現れます。

音の特徴(聞こえ方)

 伝音性難聴では、音の大きさが低下することが主な問題です。

 音の高さや質そのものは比較的保たれているため、

  • 小さく聞こえる
  • こもって聞こえる
  • 遠くで話しているように感じる

といった、“音量の問題” が中心です。

 音の形(音質)は大きく崩れないため、補聴器で量的に補うことで聞き取りが改善しやすい傾向があります。

代表的な原因

 伝音性難聴を引き起こす要因は、外耳〜中耳の構造に関係するものが多いです。

  • 耳垢栓塞(耳あかが詰まる)
  • 中耳炎(滲出性中耳炎を含む)
  • 鼓膜の損傷・癒着
  • 耳小骨の動きが悪くなる状態
  • 外耳道の狭窄・閉鎖
  • 生まれつきの外耳・中耳の構造の問題

 子どもの場合は特に、中耳炎が一時的な伝音性難聴を引き起こすケースがよくみられます。

 中耳炎による聞こえの変化については、こちらの記事をご覧ください。

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補聴器との相性

 伝音性難聴は、補聴器との相性がとても良い難聴です。

  • 音を大きくすることで改善しやすい
  • 音質は保たれているため、歪みが少ない
  • 聞き取りやすさの変化がわかりやすい

など、比較的 “補いが効きやすい” のが特徴です。

 ただし、中耳炎など原因が治ると聞こえも改善する場合があるため、耳鼻科での定期的な診察は欠かせません。

感音性難聴|音は届くのに“形が崩れる”タイプ

 感音性難聴は、内耳(蝸牛)や、そこから脳へ音の情報を送る神経の部分でトラブルが起きることで生じる難聴です。

 外耳・中耳は正常に働いているため、音そのものは鼓膜まで届きますが、音を“電気信号として理解できる形”に変換する力が弱くなることが特徴です。

どこで問題が起きているのか?

 内耳の中の「有毛細胞(ゆうもうさいぼう)」という細胞が、音の振動をキャッチして脳へ送る役割を持っています。

 しかし、

  • 有毛細胞が生まれつき弱い
  • 変形・損傷している
  • 情報を送る神経の伝達が弱い などがあると、音は届いているのに、形がくずれて脳に伝わる

という状態になります。

 そのため、

  • 子音だけ聞き取りにくい
  • 言葉の輪郭がぼやける
  • 早口が特に聞き取りにくい

など、“質の問題による聞こえにくさ” が起きやすいです。

音の特徴:音量ではなく「音質」が影響する

 感音性難聴は、伝音性難聴のように「ただ小さく聞こえる」タイプではありません。

 補聴器で音量を上げても、音の“形”が元通りにはならない部分があるため、

  • 大きくしても聞き取れない部分が残る
  • 騒音があると一気に聞こえにくくなる
  • 聞いた音を誤解したり、聞き返しが増える

といった特徴がみられます。

代表的な原因

 感音性難聴には、次のような原因が多いです。

  • 遺伝性
  • 先天性ウイルス(例:サイトメガロ)
  • 周産期のトラブル(低酸素、早産など)
  • 内耳の形成不全
  • 加齢・強大音によるダメージ(大人の例)

 子どもの場合は、先天性の要因が多く、経過が長いため早期発見と早期支援がとても大切になります。

 サイトメガロウイルス感染症については、こちらの記事で解説しています。

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 補聴器は内耳の代わりをすることはできませんが、「届きにくい音を脳に届ける手助け」をします。

  • 子音を補う高音域の増幅
  • 騒音を下げる調整(雑音抑制)
  • 方向感を補うマイク設定

など、“調整の質” が聞こえやすさに直結するのが感音性の特徴です。

 感音性難聴では特に子音が聞き取りにくくなることがあり、その理由については「語尾落ち・子音が抜ける理由」の記事でも詳しく解説しています。

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混合性難聴|音量と音質の“両方”に影響が出るタイプ

どこで問題が起きているのか?

 混合性難聴は、外耳〜中耳の伝音の問題(伝音性) と、内耳・聴神経の変換の問題(感音性)が同時に起きている状態です。

 つまり、

  • 音が耳の奥まで届きにくい(音量の問題)
  • 届いた音の形が崩れやすい(音質の問題)

という 2つの影響が重なる のが特徴です。

 構造的には、外耳・中耳のトラブルと、蝸牛(有毛細胞)や聴神経のトラブルが“両方”あるため、日常の聞こえ方も複雑になりやすい難聴です。

音の特徴(聞こえ方)

 混合性難聴では、次のように 音量と音質の両方の困りごと が見られます。

  • 音が小さく、遠くで話しているように聞こえる
  • 大きくしても言葉の輪郭がぼやける
  • 子音が特に聞こえにくい
  • 騒音下では一気に聞き取りが難しくなる
  • 中耳の状態(中耳炎など)で聞こえが変動しやすい

 「聞こえにくさが一定ではない」ことが多く、その日の体調や中耳の状態が聞き取りに影響しやすい のも混合性の特徴です。

代表的な原因

 混合性難聴の原因は、伝音性+感音性の要因が重なるときに生じます。

 子どもでは以下がよく見られます。

  • 感音性難聴があり、さらに中耳炎を繰り返す
  • 鼓膜や耳小骨の問題が同時に存在する
  • 生まれつき外耳・中耳と内耳の両方に構造的な要因がある
  • 感音性難聴の基礎があり、乳幼児期に滲出性中耳炎が続く

 特に多いのは、感音性難聴+滲出性中耳炎(聞こえの一時的悪化) という組み合わせです。

補聴器との相性

 混合性難聴では、伝音性部分と感音性部分の両方を考慮した補聴器調整が重要になります。

  • 伝音性の“音量不足” → 補聴器で改善しやすい
  • 感音性の“音質の問題” → 補聴器でも限界がある
  • 聞こえにくさが変動するため、定期的な調整が効果的

 補聴器での改善は期待できますが、中耳の状態によって聞こえが変わるため、耳鼻科のフォローも欠かせません。

まとめ

 難聴には、伝音性・感音性・混合性という3つの種類があり、それぞれは耳のどの部分で音の伝わり方や変換の仕組みが弱っているのかによって決まります。

 伝音性は“音が届きにくい”、感音性は“届いた音の形が崩れる”、混合性はその両方が重なる状態です。

 仕組みがわかると、検査結果の意味がつかみやすくなり、日常の「どう支えればいいか」も見えやすくなります。

 難聴の種類によって困りごとは違いますが、どのタイプであっても、子どもの聞こえは環境づくりや周囲の関わり方でしっかり育っていきます。

 ぜひ、ご家庭では

  • ことばをはっきり届ける
  • 振り向いてほしいときは、名前を呼んだあとに一拍おく
  • 騒がしい場所では、できる範囲で“聞こえやすい位置”をつくる
  • 気になる変化があれば、早めに耳鼻科や装用支援の専門家に相談する

といった小さな工夫を続けてみてください。

 耳の仕組みを知ることは、子どもの聞こえを安心して見守るための力になります。

 今日からできることを、少しずつ取り入れていってくださいね。

これからも難聴について正しい知識を学んでいこうね!