ママー!学校で絵の賞状もらった!

おぉー!おめでとう!やったね!

 トリケラ家の長女とうこは、学校で絵の賞状をよくもらってきます。

 色づかいが独特で、大人が見ても「こんな表現するんだ…!」とハッとする瞬間が多い子です。

 工作も好きで、立体を作るときの集中力はすごいものがあります。

 視覚的な理解も早く、最後までコツコツ取り組むタイプです。

ママー!おえかきしたー!みてー!

ミャクミャクだ!赤と青でかわいいね!

 次女のそらも、絵を描く時間が大好き。

 配色のセンスがよく、細かい部分まで丁寧に仕上げるのが得意です。

 じっくり観察してから描き始めるタイプで、描き終わるまで集中が途切れません。

 そんな二人を見ていると、

「難聴の子って、アートが得意な子が多いのかな?」

と感じることもあります。

 実は、難聴児が絵や工作など“視覚ベースの活動”で力を発揮しやすい理由は、発達の特性から説明することができます。

  • 難聴児がアートや工作を得意に見えるのは、視覚への集中力が高まりやすい特徴が関係する
  • 観察力・没頭力・丁寧さなど、視覚ベースの活動で成功体験を積みやすい
  • 才能そのものは「難聴だから」ではなく、子ども自身の個性と経験が組み合わさって伸びていく

 この記事では、難聴児がアートや工作で力を発揮しやすい理由を、科学的な視点と、我が家の実体験の両方からわかりやすく解説していきます。

難聴児がアートや工作で力を発揮しやすい理由

 難聴のある子どもは、聴覚だけでなく視覚や触覚など複数の感覚を使って世界を理解しています。

 その中でも特に「視覚」は、日常生活の中で自然と使う割合が大きくなりやすい感覚です。

 補聴器をしていても、すべての音が均一に届くわけではありません。

 そんな “聞こえにくい部分” を補うために、視覚の役割が自然と大きくなることがあります。

 その結果、色・形・動きなど、“目でとらえる情報”に向ける集中力が高まりやすくなります。

 視覚に向けられる集中力が高いほど、絵や工作のような“視覚 × 手の動き”の活動で力を発揮しやすくなるのは自然な流れです。

 補聴器による聞こえの限界については、こちらの記事で解説しています。

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とうこ・そらのケースから見える“視覚の得意さ”

 長女とうこは、色づかいや構成力が独特で、立体工作にも強い集中力を発揮します。

 視覚的に捉えるスピードが早く、最後までやり切る粘り強さもあります。

 次女のそらは、じっくり観察してから描き始めるタイプ。

 丁寧さと配色のセンスがあって、細部までこだわって仕上げます。

 二人を見ていると、難聴児だから“色彩感覚が特別に優れている”というより、視覚を使った理解や表現が得意という特徴が強く育っているように感じます。

 視覚を頼る生活が多い子どもほど、

  • 見て理解する
  • 表情や形の違いに敏感
  • 手を動かしながら表現する

という活動で自然に力を伸ばしやすいのです。

難聴児の「得意」をどう伸ばす?家庭でできるサポート

① 観察・視覚を使った声かけを取り入れる

 難聴児は“見て理解する力”が強いので、声かけも視覚的に補うと、制作がもっと楽しくなります。

  • 「どの色がいいと思う?」
  • 「この形どう並べたい?」
  • 「一度見本を見てからやってみる?」

 こうした“見える声かけ”は、子どもの表現を広げてくれる大事な関わり方です。

② 手を動かす体験をたくさん用意する

 造形・工作は“触覚+視覚”の活動なので、成功体験につながりやすい分野です。

 わが家では、プラスチックや紙ごみなどの廃材を使った工作が大ブーム。

 洗った豆腐パック、プリンカップ、R-1の容器、ティッシュの空箱、お菓子の箱、キッチンペーパーの芯など……

 とにかく何でも素材になるので、「廃材コーナー」 をつくって、とうこやそらがいつでも自由に使えるようにしています。

 この“いつでも使っていい素材”は、

  • 発想が広がる
  • 手が自然に動く
  • 好きなタイミングで没頭モードに入れる

という最高の環境づくりになっています。

③ 没頭できる時間をそっと守る

 難聴児は視覚ベースの活動で集中が続きやすいので、途中で声をかけすぎず、そっと見守る時間が大切です。

 とうこもそらも、始めたら最後まで一気に作り込むタイプ。

 その集中力が、表現力や丁寧さにつながっています。

④ 表現の違いを「個性」として受け止める

 健聴児と少し違う表現があっても、そこはその子の“見ている世界”。

 線の強弱や色の選び方、配置の仕方にはその子の個性があらわれます。

 とうこが立体工作に全集中しているとき、そらが色塗りで静かに没頭しているとき、

 そこに現れるのが——

 我らが三女みどり。

みどりもやるーー!!!

 と言いながら、紙、ハサミ、パーツを持ち去る“速さだけは世界一”。

 わたしは毎回、「みどりストッパー」として全力ダッシュで回収に向かいます。

 わが家の制作タイムは、アート × カオス × ママの守備力で成り立っています。笑

まとめ

 難聴児がアートや工作で力を発揮しやすい理由には、視覚をよく使う生活の特性や、じっくり取り組む集中力があります。

 でも、才能そのものは「難聴だから」ではなく、その子自身の個性・経験・興味の積み重ねで育っていくものです。

 とうこの独特な世界観、そらの丁寧で観察力のある表現。

 どちらも「その子だから育った力」です。

 子どもの得意は、特別な才能から生まれるというよりも、「好き」「楽しい」が続く環境で自然に伸びていくもの。

 難聴があっても、一人ひとりのペースで確かな“表現の芽”が育っていきます。

 今回、難聴児とアートの関連資料を調べる中で、「ろうの子どもたちがどんな認知のしくみで、どう学び成長していくのか?」をまとめた、とても興味深い著書に出会いました。

 専門的な内容ですが、家庭での関わりにも役立つ部分が多く、近いうちに改めてご紹介しますね。

これからも美術館や博物館にたくさん連れて行ってあげたいな!