1-3-6ルールとは?難聴児ママがやさしく解説|新生児聴覚スクリーニング後に知っておきたいこと
「1-3-6ルール」とは、赤ちゃんの難聴をできるだけ早く見つけ、適切な支援につなげるための、ひとつの目安です。
この言葉は難聴児育児における大事な目安となる指標ですが、わたしはこの言葉を誰かから教えてもらったわけではありません。病院で説明を受けたときも、療育につながったときも、この言葉を聞いた記憶はありません。
子どもの難聴について調べる中で、ネットの記事や海外の情報を追いかけているうちに、たまたま見つけて知った言葉でした。
この記事では、「1-3-6ルール」を「守れたかどうか」を評価するものではなく、今どこにいるのかを整理するための”目安”として、やさしく解説していきます。
できていなかったことを責めるためでも、早くできた人が正解、という話でもありません。
診断直後で頭が追いつかないときに、検査や支援の流れを俯瞰するための地図。そんな位置づけで、このルールを紹介したいと思います。
わかること
- 1-3-6ルールは、難聴児育児を評価する基準ではなく、支援の流れを整理するための「目安」である
- 「1・3・6」というタイミングは、焦らせる期限ではなく、選択肢を広げるために示された目安である
- ルール通りに進まなくても、育児や支援が失敗になるわけではない
- 不安な中でも「今できていること」に目を向けて次の一歩を考えよう!
1-3-6ルールとは?難聴児の早期支援のための指標
1-3-6ルールとは、赤ちゃんの難聴をできるだけ早く見つけ、適切な支援につなげるための、ひとつの目安です。
数字の意味は、とてもシンプルです。
1-3-6ルールの3つのステップ
- 生後1か月まで:聴覚スクリーニング
- 生後3か月まで:精密検査と診断
- 生後6か月まで:支援や補聴を開始
この3つのタイミングを示したものを、まとめて「1-3-6ルール」と呼びます。
1-3-6ルールは世界的に参照されている指標
実は「1-3-6ルール」という言葉は、単なるネット上の俗説ではありません。
米国CDC(アメリカ疾病予防管理センター)が示す指標として世界的に参照されている目安です。CDCでは、Early Hearing Detection and Intervention(EHDI=早期聴覚発見・介入)の中で、以下のように推奨しています。
CDCの「1-3-6ベンチマーク」
- 生後1か月までにすべての乳児が聴覚スクリーニングを受けること
- 3か月までに精密検査や診断が完了すること
- 6か月までに早期介入や支援が始まることが望ましい
CDCのこの指標は、元々は公衆衛生の観点から「可能な限り早く見つけて、その後の支援につなげよう」という目的で作られたものです。数字が示すのは「いつ頃までに目安として進めるとよいか」という目標であり、ある結果を評価して親を責めるためのルールではありません。
1-3-6ルールの日本での位置づけ
日本でも、新生児聴覚スクリーニングやその後の診断・支援の流れが重要とされており、精密検査や早期支援につながる体制整備が進められています。
厚生労働省の資料でも、新生児聴覚スクリーニング後の精密検査・診断、そして療育につなぐことの必要性が示されていることから、早期発見・早期支援の重要性自体は公的な方針として共有されています。
このように、「1-3-6ルール」は海外で示されている推奨の目安として存在し、日本においても早期発見・早期療育の流れを考える際のひとつの参考になります。
しかし、数字の通りに進められなかったからといって「遅れた」「間違っている」という評価になるものではありません。
1-3-6それぞれの数字が持つ意味を詳しく解説
1-3-6ルールの数字には、それぞれ役割があります。そしてこの数字は、単なる区切りではなく、「その時期に意味がある」ものとして考えられています。
「1」が指していること|生後1か月までの聴覚スクリーニング
まず「1」は、生後1か月までに行う新生児聴覚スクリーニングを指しています。
ここで行われるのは診断ではなく、「聞こえにくさの可能性があるかどうか」を広く拾い上げるための検査です。
生まれてすぐの時期にこのスクリーニングを行うのは、家庭での様子だけでは気づきにくい聞こえの違いを、できるだけ早く見つけるためです。
この段階では、「異常が確定する」わけではありません。
「3」が指していること|精密検査と診断の段階
次の「3」は、生後3か月ごろまでに精密検査を行い、聞こえの状態を詳しく調べていく段階を指します。
ABRやASSRなどの検査を通して、「どのくらい聞こえているのか」「左右差はあるのか」などを確認していきます。
この時期が目安とされているのは、聞こえの状態を早めに把握することで、その後の関わり方や支援の選択肢を考えやすくなるからです。
ここで急いで何かを決めなければならない、という意味ではありません。
「6」が指していること|支援や関わりにつながる時期
そして「6」は、生後6か月ごろまでに、必要に応じて補聴や療育、支援につながっていくことを示しています。
これは「必ず補聴器をつけなければならない」という期限ではなく、子どもの聞こえに合わせた関わりを始めていく時期の目安です。
赤ちゃんはこの頃から、周囲の音や声を通して、少しずつ世界を理解していきます。
その大切な時期に、「聞こえにくさがあるかもしれない」という前提を大人が共有できていること自体が、関わり方を変えるきっかけになります。
わが家の場合:1-3-6ルールに沿った流れだったけれど
- 生後1か月まで:聴覚スクリーニング⇒リファー
- 生後3か月:ABR検査⇒難聴確定診断
- 生後4か月まで:受給者証の手続きや支援先の紹介⇒療育開始
- 生後5か月:補聴器装用開始
我が家の場合、今振り返ると、結果だけを見れば「1-3-6ルール」に近い流れだったのかもしれません。でも当時は、「順調に進んでいる」と感じる余裕はまったくありませんでした。
検査の結果を待つ時間は長く感じましたし、次に何をすればいいのか、その都度調べて、考えて、迷いながら進んでいました。
だからこそ思うのは、たとえ結果的に目安に近い時期で進んでいたとしても、その過程が楽だったわけでも、安心できていたわけでもない、ということです。
1-3-6ルールを「知っている」ことの意味
1-3-6ルールは、知らなければいけない知識ではありません。知らなかったからといって、育児が間違っているわけでもありません。でも、知っていると助けになる場面は、たしかにあります。
1-3-6ルールの知識はこんなときに役立ちます
現在地を整理したいとき
検査や支援がどこまで進んでいるのかを、自分の中で整理したいとき。
「今はスクリーニングの段階なのか」「診断を待っているところなのか」「支援につながり始めたところなのか」
そんなふうに、現在地を確認するための目安として使うことができます。
支援者とのコミュニケーションに
医療機関や療育先、支援者と話すときにも、「今はこのあたりの段階です」と共有するための共通の言葉として役立つことがあります。細かい説明をしなくても、流れをイメージしてもらいやすくなるからです。
自分を責めるために使わないでください
一方で、このルールを使って、「もっと早くできたはず」「間に合わなかった」と自分を責める必要はありません。1-3-6ルールは、理想的な流れを示した”目安”であって、現実の育児を評価するためのものではないからです。
大切なのは、数字どおりに進んだかどうかではなく、その時その時に、お子さんの聞こえや状況に向き合い、次につなげていくこと。
そのための整理の道具として、このルールをそっと使ってもらえたらいいな、と思っています。
まとめ:不安な中で足元を照らす、ひとつの目安として
私は、子どもが難聴だとわかってから、毎日不安でしかたありませんでした。
この子のために何かしたい。何かしなければいけない。でも、何ができるのかも、何が正解なのかもわからなくて、ずっと手探りでした。
調べれば調べるほど情報は増えるのに、「今、私は何をしていればいいんだろう」。その答えが見えないまま、時間だけが過ぎていく感覚もありました。
もしあの頃に、1-3-6ルールを知っていたら・・・?
闇雲に不安になることなく、「今できることを、ちゃんとできている」「これでいいんだ」と、少しは安心できていたと思います。
このルールは、誰かを急かすためのものでも、比べるためのものでもありません。
不安な中で立ち止まりそうになったときに、「今はここにいる」と足元を照らしてくれる、ひとつの目安です。
もし今、同じように不安の中にいる方がいたら、この数字を、安心するための材料として使ってもらえたらうれしいです。
