【まとめ】難聴児と学校・園行事|日常と音が変わる日に備える7つのイベントガイド

明日は発表会ね…。
難聴のある子の学校行事って、どんな準備をすればいいのかしら…?
お子さんが運動会や発表会のたびに、疲れ果てて帰ってきませんか?
「みんなと同じように楽しんでほしいのに、どうサポートすればいいかわからない」と悩んでいませんか?
実は、難聴のあるお子さんにとって、学校や園の行事は、音環境が一気に変わる日です。楽しいイベントであるはずが、聞こえにくさによって、疲労やパニックのきっかけになってしまうことがあります。
なぜなら、聞こえにくさは「音量」だけの問題ではないからです。距離・雑音・話し手の変化・動きながらの会話など、複数の要因が重なって、普段より何倍もエネルギーを使ってしまいます。
この記事では、次の7つの行事別に「どこが聞こえにくいのか」「何を準備すればいいのか」を、我が家の実体験を交えてわかりやすく解説します。
- 入園式・入学式
- 遠足
- 避難訓練
- 運動会
- 発表会
- 集会
- 授業参観
学校・園行事は音環境が急変する日
運動会や発表会は、楽しいイベントです。でも難聴のあるお子さんにとっては、それ以上に音環境が一気に変わる日でもあります。
たとえば、こんな場面で聞こえにくさが増します。
- マイクの音が反響する体育館
- 屋外に広がって届きにくいアナウンス
- 突然鳴るベルや笛の音
- 大人数のざわめきの中での会話
聞こえにくさは「音が小さいから聞こえない」だけではありません。距離・雑音・話し手の違い・動きながらの会話など、いろいろな要因が重なります。だからこそ、行事は「事前の準備」で安心度が大きく変わります。
各行事のポイントは、それぞれの記事で詳しくまとめています。気になる行事から読んでみてください。
文部科学省の公式サイトによると、難聴のある子どもは補聴器や人工内耳を使っていても、複数人での会話や雑音のある場所、離れた場所からの声は聞き取りにくい状態が続くと説明されています。行事のような音環境の変化が大きい場面では、特別な配慮が必要なのはそのためです。
①入園式・入学式|最初の成功体験がその後の行事への自信をつくる

保育園の入園式は、多くの園で泣いてOK 、立ち歩いてもOKのアットホームな式であることが多いため、今回は小学校の入学式にフォーカスします。
新一年生最初の行事である入学式は、情報量がとても多い日です。
名前を呼ばれる場面、来賓のあいさつ、拍手の大きな音。入学式で「わからなかった」「怖かった」という体験をしてしまうと、その後の行事に対する不安につながることがあります。最初だからこそ、丁寧に準備しておきたい行事です。
拍手の大きな音が苦手な場合は、イヤーマフの持参も検討してみてください。写真撮影の位置についても、先生と事前に相談しておくと当日バタバタしません。
【我が家の実体験】入園式・入学式
トリケラ家の長女とうこは、地域の小学校の難聴学級に通っています。
とうこの小学校では、入学式の前日に、代表でランドセルなどの物品を受け取る児童のみが集められます。その時間を使って、入学式のリハーサルとして、流れの確認や返事の仕方、物品の受け取り方の練習が行われていました。
そのリハーサルに、特別支援学級へ入級予定の児童も招待していただきました。難聴学級の担任の先生との顔合わせを行い、少人数の落ち着いた環境で、代表の児童たちと同じように、入場の仕方や返事のタイミングを実際に体験させてもらえたのです。
「校歌はまだ分からないだろうから、聞いているだけで大丈夫だよ」
そんな一言もありました。
入学式は一発勝負の行事です。けれど、事前に流れを知っているだけで、安心感はまったく違います。とうこにとって、このリハーサルは音の確認だけでなく、見通しを持つ時間でもありました。
②遠足|事前の共有があれば屋外行動も安心して楽しめる

遠足は「屋外での動きながらの会話」が増える日です。
バスの中のアナウンス、屋外での集合、班行動での会話。屋外は音が広がりやすく、聞こえにくさがさらに大きくなります。でも、タイムスケジュールを事前に把握しておくだけで、お子さんの安心感は大きく変わります。
先生との連絡方法(声かけのタイミングや位置など)も、出発前に確認しておくと安心です。補聴器の紛失が心配な場合は、補聴器ストラップを着けてみるといいかもしれません。
【我が家の実体験】保育園の遠足(バス旅行)
長女とうこの初めてのバス旅行は、保育園の年長さんの時です。その頃には、とうこ自身で補聴器の管理もできるようになっていましたので、補聴器ストラップは着けませんでした。担任の先生もとうこの聞こえの特性をよく理解してくださっていたので、大きなトラブルもなく、無事に帰ってくることができました。
我が家で当日やったことは、とてもシンプルです。朝、両耳の補聴器の電池を新しいものに交換しておきました。たったこれだけです。「万が一の電池切れを防ぐ」という一点だけは確実に整えておきました。
【我が家の実体験】小学校の遠足(徒歩)
小学校の遠足は、保育園の頃よりも長い距離を歩きます。移動時間も長く、活動範囲も広くなります。
とうこの小学校では、授業中に使用しているロジャー(スイスの補聴機器メーカーであるPhonakが開発しているワイヤレス補聴援助システム)を、遠足にも担任の先生が持参してくださっています。

ロジャーは、話し手の声を直接補聴器に届ける補聴援助システムです。とうこを含め、難聴の子どもたちにとっては、距離や雑音の影響を受けにくくする大切なツールです。広い広場での鬼ごっこや、1年生の自己紹介の場面でも、声を出す人と離れていても、内容がしっかり届く工夫がされています。
屋外という聞き取りが難しい環境でも、「声を確実に届ける設計」があることで、安心して活動に参加できています。
③避難訓練|事前準備で怖い音を安心な音に変えられる

避難訓練で鳴る非常ベルの音は、予測できない音の代表例です。
非常ベルやサイレンは、難聴のあるお子さんにとって特別な恐怖になることがあります。パニックになって先生の指示が入らない、ということも珍しくありません。
訓練の前日までに「明日、大きな音が鳴る練習があるよ」と伝えておきましょう。「この音は危険を知らせてくれる音だよ」と意味づけをすることも大切です。
怖ければ耳をふさいでいいこと、その場を離れていいことを伝えておくと、パニックを防ぎやすくなります。学校には「事前に知らせてほしい」「小音量から慣らしてほしい」と具体的にお願いしてみましょう。
【我が家の実体験】避難訓練
長女とうこは、非常ベルの音は苦手ではありますが、泣いてパニックになるほどではありません。そのため、保育園のときは特に問題なく参加できており、小学校でも耳をふさいで聞こえを守り、安全に訓練に参加できているようです。
難聴児と避難訓練については、こちらの記事で「学校へお願いするときのポイント」などを詳しく解説しています。

④運動会|音に頼らない準備をすれば安心して参加できる

運動会は、音が最も聞こえにくくなる環境のひとつです。屋外で声が広がり、先生が遠く、競技中は後ろを向いていることも多くなります。「スタートの合図が聞こえなかった」「集合場所がわからなかった」という困りごとが起きやすい日です。
【我が家の実体験】運動会
スタートの合図については、スポーツ用品メーカーのエバニューの電子スターターピストルを、実際に保育園で使っていただいていました。
とうこが通っていた保育園には、わが家のほかにも難聴のお子さんが在籍しており、その子のお母さんが園に導入をお願いしたことがきっかけだったそうです。
現在、同じ保育園に次女が通っていますが、その対応は継続されています。一度導入された配慮が、次の子どもたちにも引き継がれていることは、とてもうれしいことですね。
難聴児と運動会について、我が家の場合は実際にどうだったのかを、こちらの記事で詳しく解説しています。

⑤発表会|準備をすれば本番を楽しむことができる

体育館は音が反響しやすく、BGMの中でセリフが聞き取りにくくなりがちです。本番は一発勝負だからこそ、事前の準備がすべてを決めます。
【我が家の実体験】発表会
保育園の発表会といえば、かわいらしい衣装に着替えてのダンスや、鍵盤ハーモニカ・カスタネット・トライアングルなどを使った合奏が多いのではないでしょうか。とうこの園でも、衣装に着替えてダンスをしました。
年少のころまでは補聴器ストラップを使用していたため、登園時の服から衣装に着替えたあとも、そのままストラップをつけてステージに上がっていました。ただ、動きが大きく、顔の周りで手をたくさん動かすダンスのときは、ストラップを外すこともありました。年中からは、補聴器ストラップは使用していません。
当時、とうこはステージの上で堂々と立つことができず、「難聴のせいで不安なのだろうか」と悩んだこともありました。でも今振り返ると、発達段階や性格の影響も大きかったのかもしれません。
合奏では、音が少しうるさいと感じることもあったようです。そのため、補聴器を外すかどうかは本人に任せていました。年長になるころには、自分で状況を判断して、補聴器のつけ外しができるようになっていました。
難聴児と発表会について、発表会で起こりやすい聞こえの困りごとを、こちらの記事で詳しく解説しています。

⑥授業参観|事前の一言で先生との連携がぐっとスムーズになる

参観日は、お子さんが緊張して声が小さくなることがあります。また、保護者が後方に集まることで教室がざわつき、普段より声が届きにくくなります。「発言したのに聞き取れなかった」という経験は、お子さんの自信にも影響します。
事前に先生と共有しておくだけで、参観日の困りごとは大きく減らせます。
【我が家の実体験】授業参観
とうこの小学校では、難聴学級での授業参観と、交流学級での授業参観の両方を一年間の中で見られるように工夫されています。3学期の授業参観は、交流学級での学習発表会でした。
とうこは自分のセリフをきちんと覚え、堂々と発表していました。その姿に、大きな成長を感じました。将来はケーキ屋さんになりたいのだそうです。かわいい夢ですね。
入学して初めての授業参観は、わたしにとっても緊張の日でした。学級懇談会の自己紹介の場面で、クラスメイトの保護者の方々に、とうこの難聴について簡単に説明をしました。
- 生まれつきの難聴であること。
- 難聴学級に所属していること。
- 普段は交流学級で過ごす時間が多くなること。
- 聞こえにくさから誤解やトラブルが起きるかもしれないこと。
- 補聴器をつけている理由を、お子さんにも伝えてほしいこと。
どこまで話すべきか迷いながら、それでも「先に伝える」ことを選びました。初めての授業参観は、とうこにとっても、わたしにとっても、大きな一歩になりました。
⑦集会|席の配慮とひと工夫で聞こえなかったをなくせる

全校集会は音のむずかしさが重なる場所です。天井に反響する音、マイクのこもった声、遠くにいる校長先生の話。「聞けなかった」が積み重なると、学校生活のつらさにつながります。でも、座る位置とちょっとした準備で、この困りごとは解決できます。
📎 補聴器メーカーフォナックの公式サイトによると、体育館のような広い場所では声が届くまでに音量が弱まり、反響音が雑音になって言葉の聞き取りを妨げるため、ロジャーを使うと騒音下や離れた距離での言葉の理解が大きく改善されると説明されています。 参考:フォナック公式サイト「ロジャー マイクロホン」
【我が家の実体験】集会
とうこの小学校では、集会は体育館で行われます。体育館は反響が強く、話し手との距離も離れやすいため、ロジャーの使用はほぼ必須の環境です。
ただ、とうこはロジャーを使うと「聞こえすぎてうるさい」と感じることがあるようです。ロジャーは、話し手の声を明瞭に届ける一方で、場面によっては刺激が強く感じられることもあります。そのため、とうこはロジャーを使う場面を自分で選んでいます。
集会中に
- 聞こえにくい
- ロジャーを使いたい
- うるさいからロジャーを切りたい
といった合図を、あらかじめ先生と決めているそうです。自分の聞こえの状態を自分で判断し、伝え、調整する。とても大切な力だと感じています。
まとめ|学校・園行事は環境づくりが大切
難聴のあるお子さんにとって学校・園行事を楽しむために大切なことは、音を大きくすることではありません。聞きやすい環境をつくることです。
行事は不安な日ではありません。準備しだいで、お子さんにとって「楽しかった」と思える日に変えることができます。
このシリーズの各記事では、行事ごとの具体的なチェックリストと学校への伝え方を詳しく解説しています。気になる行事の個別記事から読んでみてください。
このシリーズが、難聴児のママたちの安心のお守りになれたら嬉しいです。

