【完全保存版】難聴児の聴力検査まとめ|年齢別に見る検査の流れとポイント解説!

聴力検査って種類がたくさんあってよくわからない…
BOA、COR、ABR、ASSR、純音聴力検査、語音明瞭度検査……。
病院で説明を受けたはずなのに、あとから結果用紙を見返すと、よくわからない専門用語だけが並んでいるように感じることはありませんか?
私自身、子どもが小さい頃は「この検査で何がわかっているんだろう」「次はなぜ別の検査をするんだろう」と、そのつながりが見えないまま不安だけが残っていました。
しかし、振り返ってみると、聴力検査はバラバラに存在しているのではなく、子どもの成長に合わせて「わかることが少しずつ増えていく仕組み」だったのです。
この記事では、0歳から小学生までの間に行われる聴力検査を年齢の流れに沿って整理しました。全体像をひと目でつかめるようにまとめています。
お子さんの年齢を思い浮かべながら「うちは今このあたりかな」という気持ちで読み進めてください。
わかること
- 今の年齢でどんな検査が行われやすいのか
- その検査でどんなことがわかるのか
- 次の時期には何が見えてくるのか
今の年齢で、今のわが子にとって、どんな情報が得られていれば十分なのか。この記事が、聴力検査を「不安のかたまり」ではなく、わが子の聞こえ方を知るための道しるべとして整理する手助けになればうれしいです。
ここからは、0歳から小学生ごろまでの流れに沿って、年齢ごとに行われやすい聴力検査と、その時期に「どんなことがわかるのか」を見ていきます。検査名を覚えることよりも、今の年齢で何が確認できていれば安心なのか、その目安として読んでください。
新生児~6ヶ月|眠っている間に「聞こえの土台」を確認する時期
生まれてすぐの赤ちゃんは「聞こえたよ」と教えてくれることができません。そのため、この時期の聴力検査では、赤ちゃん自身の反応や脳の動きを手がかりにして聞こえの状態を確認していきます。
0歳ごろに行われることが多いのは、音に対する脳の反応を見る検査です。眠っている間に行うことが多く、赤ちゃんに何かをがんばってもらう検査ではありません。
新生児聴覚スクリーニング検査(聞こえにくさの可能性がないかのチェック)
新生児聴覚スクリーニング検査は、生まれてすぐの赤ちゃんを対象に行われる検査です。
この検査の目的は「聞こえにくさの可能性がないか」をできるだけ早い段階で見つけることです。短時間で行えるのが特徴で、赤ちゃんが眠っている間に実施されることも多く、体への負担はほとんどありません。
ただし、この検査は聞こえ方を詳しく調べるためのものではなく、あくまで「ふるい分け」の役割を持つ検査です。そのため、結果によっては「もう少し詳しい検査をしてみましょう」と次の検査につながることがあります。
この検査の医学的な仕組み

新生児聴覚スクリーニング検査では、主に2つの方法が使われます。
耳の奥にある内耳の有毛細胞が正常に機能しているかを確認します。
音を聞かせたときに内耳から返ってくる微弱な音を測定する仕組みです。
音が脳まで届いているかを簡易的に確認します。
どちらも客観的な測定が可能で、赤ちゃんが眠っている間に数分で完了します。
新生児聴覚スクリーニング検査のなぜ?どうして?
- 検査結果の信頼性は?
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この検査の感度(聴覚障害を見逃さない確率)は非常に高く設定されていますが、一方で偽陽性(本当は問題がないのにリファーと判定される)も一定数発生します。
リファー(要再検査)と判定されても、実際に聴覚障害があるのは約10人に1人程度です。耳垢や羊水の残り、検査時の体動などで一時的に反応が出にくいこともあります。
そのため、リファーと判定されても過度に心配せず、精密検査を受けることが大切です。
- なぜこの時期に行うの?
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先天性聴覚障害の発生頻度は新生児1,000人に1〜2人とされており、比較的頻度の高い先天性疾患です。
日本耳鼻咽喉科学会も「生後3日以内のスクリーニング、生後1ヶ月までの精密検査、生後6ヶ月までの療育開始」を推奨しています。
- この検査でわかったことは、その後どう役立つの?
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新生児聴覚スクリーニング検査は、聴覚障害の早期発見システムの入り口として位置づけられています。この検査でリファーとなった場合、精密検査(ABRやASSR)へと進み、診断が確定すれば補聴器装用や療育支援へとつながっていきます。
現在、日本では出生児の約90%以上がこの検査を受けており、公費助成を行う自治体も増えています。
新生児聴覚スクリーニング検査については、こちらの記事で詳しく解説しています。

ABR検査:聴性脳幹反応検査(音に対する脳の反応を測る検査)
ABR検査は、音に対する脳の反応を測る検査です。新生児聴覚スクリーニングでリファーとなった赤ちゃんへの精密検査として、また難聴の確定診断に使用されます。
音を聞いたときに、耳から脳へと信号が伝わっているかを脳波として記録することで、聞こえの状態を確認します。赤ちゃん自身が反応を示す必要がないため、眠っている間に行われることが多い検査です。
診断や補聴器・支援を考えるための大切な情報になる検査のひとつです。
この検査の医学的な仕組み

ABR検査では、耳にイヤホンをつけて音(主にクリック音やトーンバースト音)を聞かせ、その際に発生する脳幹の電気活動を頭皮上の電極で記録します。
音が耳に入ってから脳幹を通過するまでの間に、I波からV波までの5つの波形が現れます。特にV波は最も安定して観察でき、このV波が何デシベル(dB)の音で出現するかを「V波閾値」として測定します。
V波閾値は実際の聴力レベルに近い値を示すため、診断の重要な指標となります。
検査結果の信頼性
- 検査結果の信頼性は?
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ABR検査は他覚的検査(本人の反応に依存しない検査)の中で最も信頼性が高く、乳幼児の聴力評価のゴールドスタンダードとされています。
ただし、測定できる周波数帯域は主に2000〜4000Hz付近に限られており、低音域や高音域の詳細な情報は得られにくいという限界があります。
また、検査時に赤ちゃんが動いたり筋肉に力が入ったりすると、ノイズが混入して正確な測定ができないため、自然睡眠中または鎮静下で行う必要があります。
- なぜこの時期に行うの?
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新生児期から乳児期は、まだ行動反応による聴力検査(BOAやCOR)では正確な評価が困難な時期です。しかし、聴覚障害の早期診断と早期介入のためには、できるだけ早く客観的な聴力評価が必要です。
- この検査でわかったことは、その後どう役立つの?
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- 補聴器のフィッティングや人工内耳適応の判断、療育計画の立案に活用される。
- 成長に伴う聴力の変化を追跡する際にも、再現性の高い検査として繰り返し実施されることがある。
ASSR検査(聴性定常反応検査)とは
ASSR検査も、音に対する脳の反応を利用した検査です。
ABR検査と同じように、赤ちゃんが答えなくても行うことができますが、より細かく周波数ごとの反応を調べられるという特徴があります。そのため、どの音域が聞こえにくそうか、より具体的な聴力の傾向を知るために行われることがあります。
ABR検査とASSR検査は、どちらか一方だけを行う場合もあれば、目的に応じて組み合わせて行われることもあります。「検査が増えた=悪いこと」ではなく、聞こえの状態をより丁寧に把握しようとしていると受け取ってください。
この検査の医学的な仕組み

ASSR検査は、一定の周波数で変調された音(振幅変調音や周波数変調音)を連続的に聞かせ、脳が同じリズムで反応する「定常状態反応」を測定します。
ABR検査が瞬間的な音に対する一過性の反応を見るのに対し、ASSR検査は持続的な刺激に対する定常的な反応を測定するため、より周波数特異的な情報が得られます。
通常、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hzといった複数の周波数で同時に測定することが可能です。
ASSR検査のなぜ?どうして?
- 検査結果の信頼性は?
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ASSR検査は周波数別の聴力評価に優れており、特に補聴器フィッティングに必要な周波数ごとの利得(ゲイン)を設定する際に有用です。
ただし、ABR検査に比べると検査時間が長くなる傾向があり、また軽度から中等度難聴の場合は反応が不明瞭になることがあります。
一方、高度から重度難聴の場合には、ABR検査では反応が得られにくい大きな音でも測定できるため、聴力レベルの推定に役立ちます。
- なぜこの時期に行うの?
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乳幼児期の補聴器フィッティングでは、周波数別の正確な聴力情報が必要です。特に両耳装用の補聴器調整や、人工内耳の適応評価において、低音域から高音域まで詳細な聴力情報が求められる場合に実施されます。
- この検査でわかったことは、その後どう役立つの?
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- ASSR検査は、ABR検査を補完する検査として位置づけられている。
- 補聴器フィッティングのために、より詳細な周波数別情報が必要な場合や、高度・重度難聴で残存聴力を正確に評価したい場合に追加実施されます。
- 得られたデータは、補聴器の周波数別利得設定や、療育方針の決定などに活用される。
新生児~6ヶ月ごろの検査のポイント
- 「音がきちんと耳から脳まで届いているかどうか」「おおまかにどのくらいの大きさの音で反応が出るか」といった「聞こえの土台」の部分をみる時期。
- まだ細かい聞こえ方や日常生活での困りごとまで見えるわけではないが、診断やこれからの支援を考えていくためのとても大切なスタート地点になる。
- 結果を見て「よくわからない数値が並んでいる」と感じることもあるかもしれないけれど、この時期はすべてを理解できなくて大丈夫。
ABR検査とASSR検査の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

7ヶ月〜2歳|音に気づく・振り向く反応が見えてくる時期
この時期に中心になるのは、音に対する反応そのものを見る検査です。代表的なのは、「BOA検査」と「COR検査」の2つです。
BOA検査:行動観察聴力検査(音を聞いたときの自然な反応を見る検査)
BOA検査は、音を聞いたときの赤ちゃんの自然な反応を見る検査です。
音が鳴ったときに、びくっと体を動かす、目を動かす、表情が変わる、といったごく小さな反応を手がかりに、音に気づいているかどうかを確認します。
この検査では「音が聞こえたら、こうしてね」といったルールの理解は必要ありません。そのため、月齢の低い赤ちゃんや、まだ振り向きが安定しない時期の子にも行いやすい検査です。
この検査の医学的な仕組み

BOA検査では、様々な音刺激(太鼓、ベル、ガラガラ、音声など)を提示し、驚愕反射、眼瞼反射、探索反射、吸啜の変化、呼吸の変化、体動の停止などの自然な反応を観察します。
これらの反応は、音に対する原始的な反射や注意反応であり、特別な学習や条件付けを必要としません。検査者は、赤ちゃんの微細な変化を見逃さないよう、静かな環境で慎重に観察を行います。補聴器装用後の反応の変化を観察する際にも活用されます。
BOA検査のなぜ?どうして?
- 検査結果の信頼性は?
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BOA検査は主観的な要素が強く、再現性に限界があります。
さらに、赤ちゃんの覚醒状態、機嫌、疲労度、慣れなどによって反応が大きく変動するため、あくまでスクリーニング的な情報として扱われます。
- なぜこの時期に行うの?
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ABRやASSR検査は鎮静(赤ちゃんを眠らせること)が必要で頻繁には実施できないため、外来で簡便に実施できるBOA検査は、日常的な聴力の確認や経過観察に有用です。
- この検査でわかったことは、その後どう役立つの?
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- 聴力の正確な測定というよりも、「音に対する反応があるか」「補聴器装用で反応が変化するか」といった大まかな評価に使われる。
- 日常的なフォローアップや、保護者への説明の際に「このくらいの音には反応していますね」という形で活用される。
- 他の客観的検査(ABR、ASSRなど)と組み合わせて、総合的に聴覚の状態を評価していく。
COR検査:条件詮索反応聴力検査(音+光などへの反応をみる検査)
COR検査は、音が鳴った方向に顔を向けたり、振り向いたりする反応を見る検査です。
音と同時に、光やおもちゃなどの視覚的な刺激を組み合わせて、「音が鳴ると、あそこを見る」という行動を引き出します。
この検査では、音に気づいたことを体の動きとして示せるかどうかが大きなポイントになります。BOA検査よりも、反応が少しはっきりしてくる1歳前後から行われることが多く、音に対する反応をより安定して確認できるようになります。
この時期の検査は、正確な数値を出すことが目的ではなく、成長とともに変化していく聞こえの様子を追っていくための大切なステップになります。
この検査の医学的な仕組み

COR検査は、古典的条件付けの原理を応用しています。
音刺激(条件刺激)と視覚刺激(無条件刺激:光るおもちゃやアニメーション)を繰り返し対提示することで、「音が鳴ったら、あちらを見るとおもしろいものが見られる」という学習を成立させます。
赤ちゃんは生後6ヶ月頃から音源定位(音がどこから聞こえてくるかを判断する能力)が発達するため、この能力を利用して聴力を評価します。通常、左右にスピーカーと視覚刺激装置を配置し、音に対する振り向き反応を観察します。
COR検査のなぜ?どうして?
- 検査結果の信頼性は?
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COR検査はBOA検査に比べて反応がより明確で、再現性も向上します。条件付けが成立すれば、比較的安定した反応閾値が得られ、実際の聴力レベルに近い値(±10〜20dB程度)を推定できるようになります。
ただし、検査の成立には赤ちゃんの協力と集中力が必要で、機嫌や体調、慣れによって結果が変動することがあります。また、測定できる周波数は限られており、通常は500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz程度の範囲です。
- なぜこの時期に行うの?
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生後6ヶ月から2歳頃までは、音源定位反射は発達しているものの、まだ遊戯聴力検査のような複雑なルールを理解することは難しい時期です。
COR検査は、この発達段階に適した検査方法として、BOA検査よりも信頼性の高い行動反応を引き出すことができます。
また、補聴器装用効果の確認や、聴力の経時的変化を追跡する際にも、繰り返し実施しやすい検査です。
- この検査でわかったことは、その後どう役立つの?
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COR検査は、乳幼児期の行動聴力検査の中心的な方法として位置づけられています。
- ABRやASSRなどの他覚的検査で得られた聴力レベルを、行動反応として確認することができる。
- 補聴器装用後の効果判定や、人工内耳埋め込み後のマッピング調整の際の参考情報としても活用される。
- 遊戯聴力検査が安定して実施できるようになるまでの橋渡し的な検査として、重要な役割を担っている。
COR検査については、こちらの記事で詳しく解説しています。

7ヶ月〜2歳ごろの検査のポイント
- 「正確な数値を出す」ことよりも、音に気づいているか、どんな音に反応しやすいか、その傾向を見ることを目的としている。
- 日によって反応が違ったり、集中できないこともよくあるが、それも含めて成長の途中を見ている検査である。
- 1〜2歳ごろは反応を見る検査が中心だが、成長とともに、少しずつ「ルールを理解して数値として測る検査」に移っていく。
3〜4歳|聞こえを「数値」として捉え始める時期
3〜4歳ごろになると、「音が聞こえたら、こうする」といった簡単なルールを理解して、検査に参加できる子が増えてきます。この時期から中心になるのが、遊びの形を使って行う聴力検査です。代表的なのが遊戯聴力検査です。
遊戯聴力検査(ルールを使って行う検査)
遊戯聴力検査は「音が聞こえたら、決まった動作をする」というルールを使って行う聴力検査です。
たとえば、音が聞こえたらブロックを箱に入れる、ボタンを押す、コップを重ねる、といった遊びの形で検査が進みます。
子どもが「今は検査をしている」「音が聞こえたら、これをする」という流れを理解できるようになると、この検査ができるようになります。
この検査の医学的な仕組み

遊戯聴力検査は、オペラント条件付けの原理を応用しています。「音が聞こえたら特定の動作をする」という行動を強化するために、正しい反応に対しては褒めたり、遊びが進行したりといった報酬を与えます。
検査では、ヘッドホンまたはスピーカーから様々な周波数の純音を提示し、子どもが音を検出したときに決められた動作(ブロック入れ、ペグ差し、ボタン押しなど)を行うように教えます。条件付けが成立すれば、音の大きさを段階的に小さくしていき、反応が得られる最小の音圧レベル(閾値)を測定します。
遊戯聴力検査のなぜ?どうして?
- 検査結果の信頼性は?
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遊戯聴力検査が安定して実施できるようになると、純音聴力検査に近い精度で聴力レベルを測定できるようになります。周波数別の測定が可能で、左右別の評価もできるため、聴力図(オージオグラム)を作成することができます。
ただし、子どもの集中力や理解度、動機づけによって結果が変動することがあります。特に検査初期や疲れているときには、偽陽性反応(音が鳴っていないのに反応する)や、偽陰性反応(音が聞こえているのに反応しない)が出やすくなります。
- なぜこの時期に行うの?
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この認知発達の段階に達すると、遊戯聴力検査が可能になり、それまでの観察的な検査(BOAやCOR)よりも正確な聴力評価ができるようになります。
また、就学前の時期に聴力レベルを正確に把握しておくことは、学校生活での配慮事項を検討する上でも重要です。
- この検査でわかったことは、その後どう役立つの?
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- 初めて周波数別・左右別の聴力レベルを数値として記録できるようになり、補聴器のフィッティングや療育計画がより精密に行えるようになる。
- 学校や保育園への情報提供の際にも、具体的な聴力データとして活用される。
- 検査が安定して実施できるようになるまでは、COR検査などを併用しながら、段階的に移行していく。
3〜4歳ごろの検査のポイント
- 検査に慣れてくると、ヘッドホンをつけて、片耳ずつ音を聞く検査ができるようになることもある。片耳ずつ測れるようになると、左右それぞれの聞こえ方や、音の高さごとの聞こえを数値として捉えやすくなる。
- 集中力や理解度には個人差があり、毎回安定した結果が出るとは限らない。うまくできない日があっても「まだ早い」「失敗した」ということではなく、成長の途中として受け止めながら、必要に応じてほかの検査と組み合わせて聞こえの様子を見ていく必要がある。
- この時期の検査は「正確な数値を一度で出す」ことが目的ではない。少しずつ、数値としての聞こえに近づいていく段階だと考えるとよい。
※集中が続かない日や、検査のルールが難しい場合には、COR検査のような反応を見る検査が補助的に使われることもあります。
5歳〜小学生|生活や学校につながる聞こえを考える時期
5歳ごろから小学生になると、検査の意味を理解して、落ち着いて取り組める子が増えてきます。この時期の検査では、聞こえを数値として安定して測ることや、「言葉として、どのくらい聞き取れているか」を生活や学校場面と結びつけて考えることが大切になってきます。
純音聴力検査(音が鳴ったらボタンを押す基本の検査)
純音聴力検査は「音が聞こえたら教える」ことで行う、基本となる聴力検査です。
ヘッドホンをつけて、片耳ずつ、いろいろな高さの音を聞き、どのくらいの大きさで聞こえるかを調べます。実はこの検査、私たちが学校や会社の健康診断で受けてきた、あの聴力検査と同じものです。
結果は聴力図として記録され、これまでの検査結果との変化を見たり、補聴器や人工内耳の調整、学校への説明資料として使われることも多くなります。
この検査の医学的な仕組み

純音聴力検査は、国際標準化された方法(ISO 8253)に基づいて実施されます。
125Hz、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz、8000Hzといった各周波数の純音を、段階的に音の大きさを変えながら提示し、被検者が「聞こえた」と反応できる最小の音圧レベル(聴覚閾値)を測定します。
気導検査(ヘッドホンやイヤホンを使用)では、外耳から中耳、内耳を経て脳に至る聴覚経路全体の機能を評価します。
必要に応じて骨導検査(骨導端子を乳様突起に当てる)を行い、内耳以降の機能を評価することで、難聴の種類(伝音難聴、感音難聴、混合難聴)を判別できます。
純音聴力検査のなぜ?どうして?
- 検査結果の信頼性は?
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結果は聴力図(オージオグラム)として記録され、横軸に周波数、縦軸に聴力レベル(dB HL)をとって視覚化されます。聴力レベルは、正常(0〜25dB)、軽度難聴(26〜40dB)、中等度難聴(41〜70dB)、高度難聴(71〜90dB)、重度難聴(91dB以上)といった分類で評価されます。
- なぜこの時期に行うの?
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また、就学を控えた時期であり、学校生活での聞こえの状態を正確に把握し、必要な配慮を検討するためにも、標準的な聴力データが必要になります。
小学校では学校保健安全法に基づき定期的に聴力検査が実施されるため、この検査方法に慣れておくことも重要です。
- この検査でわかったことは、その後どう役立つの?
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純音聴力検査は、聴力評価の基準(ゴールドスタンダード)として位置づけられています。乳幼児期に他覚的検査や行動聴力検査で得られた聴力情報を、最終的にこの検査で確認・更新していきます。
- 検査結果をもとに、補聴器や人工内耳のフィッティングを行うことができる。
- 療育方針や学校での支援内容もこのデータをもとに決定される。
- 経時的な聴力変化を追跡する際の基準としても、定期的に実施される。
純音聴力検査については、こちらの記事で詳しく解説しています。

語音明瞭度検査とは
語音明瞭度検査は、音として聞こえているかだけでなく、言葉として正しく聞き取れているかを調べる検査です。
検査では「あ」「な」「は」などの短い言葉(単音節)が聞こえてきて、それを聞こえたとおりに答えます。答え方は、紙にひらがなを書いたり、検査をしている言語聴覚士に「〇〇って聞こえた」と伝えて、代わりに書いてもらったりします。
ひらがなを理解し、聞こえた音を言葉として扱える必要があるため、年齢の目安としては、一般的に年長ごろからやっと安定してできるようになる検査です。
この検査の医学的な仕組み

語音明瞭度検査では、標準化された語音リスト(日本語では57式語表や67式語表が一般的)を使用します。これらは、日本語の音韻体系を代表する単音節(あ、か、さ、など)や単語を含んでおり、検査結果の比較可能性を保証します。
検査では、一定の音圧レベル(通常は最適聴取レベル)で語音を提示し、正しく聞き取れた語音の割合を「明瞭度スコア」として算出します。また、音圧レベルを変えながら測定することで、最も良く聞き取れる音の大きさ(最適聴取レベル)や、最大明瞭度(どんなに大きな音でも、これ以上は良く聞き取れないという限界値)を評価します。
語音明瞭度検査のなぜ?どうして?
- 検査結果の信頼性は?
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語音明瞭度検査は、純音聴力検査では分からない「言葉の聞き取り能力」を評価できる重要な検査です。
純音聴力が比較的良好でも、語音明瞭度が低い場合があり、これは後迷路性難聴(内耳より中枢側の障害)や聴覚情報処理障害(APD)などを示唆する可能性があります。ただし、子どもの場合は、言語発達の程度、集中力、疲労、使用する語音リストへの慣れなどによって結果が変動することがあります。
- なぜこの時期に行うの?
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また、学校生活では教師の話や友達の会話を正確に聞き取る能力が求められるため、「音として聞こえているか」だけでなく「言葉として理解できているか」を評価することが重要になります。補聴器や人工内耳を使用している場合は、機器の効果判定としても語音明瞭度検査が重要な役割を果たします。
- この検査でわかったことは、その後どう役立つの?
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- 聴覚リハビリテーションの効果判定や、補聴器・人工内耳のフィッティング評価に不可欠。
- 純音聴力レベルが同じでも、語音明瞭度には個人差があるため、この検査結果をもとに、より個別化された支援計画を立てることができる。
- 学校での聞き取りの困難さを具体的に説明する際にも、「70%の明瞭度」といった数値が、教師や支援者に分かりやすい情報となる。
- 定期的に実施することで、聴覚の変化や補聴効果の変化を追跡し、適切なタイミングで支援内容を見直すことができる。
5歳〜小学生ごろの聴力検査のポイント
- 大人と同じ純音聴力検査や語音明瞭度検査が可能になり、学校での座席位置や支援内容を決める具体的な根拠が得られる。
- 小学校での定期健診と医療機関での検査を照らし合わせることで、聴力の変化や補聴器の効果を確認できる。
- 「補聴器なし」と「補聴器あり」の両方で測定することで、機器の効果を客観的に評価でき、調整や療育内容の見直しにつながる。
- 「聞こえにくい」「困る場面」を具体的に伝えられるようになり、本人の訴えと検査データを組み合わせた支援が可能になる。
まとめ:聴力検査は成長に合わせて「見える角度が増えていく」もの
年齢別に見てきましたが、聴力検査はある日突然「完成形」になるものではありません。
0歳では、音が耳から脳に届いているかという聞こえの土台を確認し、1〜2歳ごろには、音に気づく力や反応を見ることで、だいたいの聞こえ方をつかみます。3〜4歳ごろからは、遊びの形を通して、少しずつ数値としての聞こえに近づいていきます。そして、5歳ごろから小学生になると、純音聴力検査や語音明瞭度検査を通して、生活や学校につながるより具体的な聞こえ方が見えてくるようになります。
どの検査も、それまでの検査が無駄になるわけではなく、成長に合わせて「見える角度が増えていく」だけです。今の年齢で、今の発達段階で、わかっていれば十分なことがあります。結果が安定しない時期があっても、検査の種類が行き来しても、それは遠回りではありません。その子のペースに合わせて、少しずつ聞こえを理解していくための自然な道のりです。
この記事が「今、うちはどの段階なのか」「次に、何がわかっていくのか」を整理するための地図のような存在になればうれしいです。必要なときに、また戻ってきて、今の年齢のところを読み返してください。
聴力検査は、不安を増やすためのものではなく、わが子の聞こえ方を知り、暮らしやすさにつなげていくための大切なヒントです。
- 厚生労働省「新生児聴覚検査の実施について」
- 日本聴覚医学会「聴覚検査法」
- 日本耳鼻咽喉科学会「新生児聴覚スクリーニングマニュアル」
