軽度・中等度・高度・重度の違い|子どもの難聴の特徴と支援をわかりやすく解説

トリケラ家の長女とうこ・次女そらは40~60dB程度の中等度の感音性難聴だよ。
子どもの難聴は、軽度・中等度・高度・重度の4段階に分けられます。聞こえ方や困りごとは段階によって大きく異なり、必要な支援も変わります。
- 難聴は軽度・中等度・高度・重度で聞こえ方が大きく異なる
- 同じ数値でも、子どもが感じる聞こえにくさには個人差がある
- 必要な支援は程度だけでなく、距離・雑音・環境によって変わる
- 子どもに合う支援を、家庭・園・学校と連携して整えることが重要
この記事では、難聴の4段階の違いと、それぞれで見られやすい特徴、支援のポイントをまとめています。
Contents
難聴の4段階(軽度・中等度・高度・重度)とは?
難聴の程度は、平均聴力レベル(4分法)によって分類されています。
軽度難聴(25〜39dB)
小さな声や子音が聞き取りにくくなる段階。日常会話はある程度聞こえる一方で、聞き返しが増えやすくなります。
中等度難聴(40〜69dB)
普通の会話は近距離なら聞こえますが、距離が少し離れると聞き取りにくくなります。
園や学校などの騒音下では理解が大きく落ちます。
高度難聴(70〜89dB)
裸耳での日常会話の理解が難しい段階。大きな音に反応することがありますが、言葉として理解することは困難な場合が多くあります。
重度難聴(90dB以上)
非常に大きな音であれば反応することがありますが、言葉の聞き取りは困難です。早期から視覚的な支援を含む多面的なサポートが重要になります。
難聴の原因については、こちらの記事で解説しています。合わせてご覧ください。
子どもの生活で見られやすい特徴(程度ごと)
子どもの難聴は、日常の行動に表れやすいことがあります。
医学的な聴力レベルと、家庭や園での行動のサインは必ずしも一致しません。
軽度難聴(25〜39dB)
医学的な特徴
- 小さな声や子音が聞き取りにくい
- 雑音があると理解が落ちやすい
家庭・園で見られやすい行動
- 呼びかけの聞き逃しが増える
- 語尾が抜けて聞こえることがある
- 知らない単語を聞き間違えやすい
- 後ろからの声かけに気づきにくい
中等度難聴(40〜69dB)
医学的な特徴
- 普通の会話は近距離なら聞こえる
- 少し離れるだけで理解が難しくなる
- 騒がしい場所では聞き取りにくい
家庭・園で見られやすい行動
- 会話中に「ん?」「なに?」が増える
- 伝えた内容が部分的に抜けて理解される
- 後ろや横からの声かけが届きにくい
- 集団活動で誤解が起きやすい
高度難聴(70〜89dB)
医学的な特徴
- 裸耳で日常会話の理解が難しい
- 大きな音には気づくことがある
- 補聴器でも言葉の聞き取りに限界が出る場合がある
家庭・園で見られやすい行動
- 名前を呼んでも気づかないことが多い
- 音には気づくが、言葉として理解しにくい
- 口の動きや表情がないと理解が難しい
- 会話が続かず誤解につながりやすい
重度難聴(90dB以上)
医学的な特徴
- 裸耳での言語の聞き取りがほぼ困難
- 非常に大きな音に反応することがある
- 多面的な支援が必要
家庭・園で見られやすい行動
- 音への反応にばらつきがある
- 視覚情報が特に重要になる
- 身振りや表情でのコミュニケーションが中心になる
- 環境が整わないと理解が難しい
スピーチバナナと聞こえのイメージ
スピーチバナナとは、日常会話で使われる母音・子音が、どのくらいの大きさ・周波数に位置するかを示した図です。母音は比較的聞こえやすく、子音は高い周波数帯に集まっています。
次女そらの聴力検査の結果とスピーチバナナを重ねた図を見ると、どの音が届きやすく、どの音が届きにくいのかが一目でわかります。

この図からわかるポイントは次のとおりです。
- 子音が高い周波数に集中しているため、裸耳では聞こえにくくなることが多い
- 補聴器をつけることで、聞こえる範囲がスピーチバナナに近づく
- 聞こえている音は発音にも影響し、子音が弱くなったり語尾が落ちたりすることがある
程度ごとの支援(家庭・園・学校)
必要な支援は、難聴の程度と生活環境によって変わります。
軽度難聴(25〜39dB)の支援
- 正面からゆっくりめに声をかける
- 語尾まではっきり伝える
- 雑音の多い場所はできるだけ静かに整える
- 説明は短く区切って伝える
中等度難聴(40〜69dB)の支援
- 座席を前方や話者の正面にする
- 騒音下では言い換えや繰り返しを使う
- 表情やジェスチャーなど視覚情報を自然に取り入れる
- 補聴器の調整を定期的に行う
とうこ・そらの場合も中等度難聴にあたり、距離と雑音の影響を受けやすい場面が多くありました。
先生が名前を呼び、少しゆっくり話し始めてくれるだけでも理解が安定しました。
高度難聴(70〜89dB)の支援
- 音だけに頼らず視覚支援を中心にする
- 絵カードやジェスチャーなど複数の伝達手段を用意する
- 口の動きや表情が見える位置で伝える
- 支援級や専門支援を検討する
重度難聴(90dB以上)の支援
- 視覚中心のコミュニケーションを取り入れる
- 身振りや表情を活用して伝える
- 落ち着いた環境で話す
- 専門機関と連携して支援を進める
補聴器と人工内耳(CI)の違いと選び方
補聴器と人工内耳は、子どもの聞こえ方や日常での理解の様子によって選び方が変わります。
補聴器が選ばれやすいケース
- 軽度〜中等度難聴の場合
- 高度難聴でも補聴器で会話理解が安定する場合
- 音を増幅することで聞こえを活かせる場合
とうこ・そらも補聴器を装用することで日常の会話が安定し、新しい言葉の入り方にも大きく影響がありました。
人工内耳が検討されるケース
- 両側の高度〜重度難聴
- 補聴器で言葉の聞き取りが十分に改善しない場合
- 医療機関の総合判断で適応となる場合
人工内耳の仕組みや適応基準、補聴器との違いについては別の記事で詳しくまとめる予定です。
選び方のポイント
補聴器と人工内耳の選択は、聴力レベルだけでなく、語音の聞き取り、日常での様子、言語の発達状況を総合的に見て判断されます。
まとめ
難聴は、軽度・中等度・高度・重度によって聞こえ方や困りごとが大きく異なります。
同じ数値でも、子どもがどのように聞こえているか、どんな場面でつまずきやすいかには個人差があります。
軽度では聞き逃しが増え、中等度では距離や雑音の影響を受けやすく、高度・重度では補聴器だけでの聞き取りが難しくなる場合があります。
家庭・園・学校での小さな配慮の積み重ねが、子どもの安心と理解につながります。
補聴器と人工内耳の選択は、聴力の数値だけではなく、語音の聞き取りや日常での様子を総合的に見て決めていくことが大切です。
これからも一緒に難聴のことを学んでいこうね!





