子どもの難聴は治る?原因によって違う「治る難聴」と「治らない難聴」その可能性を解説

子どもが難聴と診断されたけど、難聴って治るのかしら…?
診断を受けたとき、多くの保護者がまずそう考えると思います。私もそうでした。
結論から言うと、子どもの難聴には治るものもあれば、治らないものもあります。そしてそれは、努力不足や育て方ではなく、難聴の「原因」によって決まります。
この記事では、「治る可能性がある難聴」と「治らない難聴」の違い、そして治らないと言われたときに知っておいてほしいことを、難聴児ママ目線でわかりやすくまとめます。
難聴は「治る・治らない」で分けられる
難聴の医学的分類2つのタイプ
医療の世界では、難聴は大きく以下の2つに分けて考えられています。
- 一時的なもの(治る可能性がある難聴)
- 永続的なもの(治らない難聴)
つまり、「難聴」という診断名だけでは、治るかどうかは判断できません。どこに原因があるのかが、とても重要なのです。
難聴の原因は「耳のどこ」に問題があるかで決まる
難聴の種類は、耳のどの部分に問題があるかによって分類されます。
- 外耳・中耳の問題 → 伝音性難聴(音が伝わりにくい)→ 治る可能性が高い
- 内耳・聴神経の問題 → 感音性難聴(音を感じ取れない)→ 治らないことが多い
- 両方の問題 → 混合性難聴 → ケースによる
この分類によって、治療の方針や見通しが大きく変わってきます。
治る可能性のある難聴
治る可能性がある難聴は、主に外耳や中耳に原因があるタイプや、炎症・感染など後天的な原因による難聴です。
滲出性中耳炎
どんな状態?
鼓膜の奥(中耳腔)に液体がたまることで、音が伝わりにくくなる状態です。子どもに非常に多く見られます。
主な症状
- 聞き返しが多くなる
- テレビの音を大きくする
- 呼んでも反応が鈍い
- 耳が詰まった感じがする
治療と経過
治療や経過観察によって改善するケースが多くあります。自然に治ることもありますが、必要に応じて以下の治療が行われます。
- 鼻の治療(鼻づまりの改善)
- 薬物療法
- 鼓膜切開
- チューブ留置
難聴児と中耳炎の関係については、こちらの記事でも解説しています。

突発性難聴
どんな状態?
ある日突然、片方の耳が聞こえにくくなる病気です。大人に多いですが、子どもにも起こることがあります。
重要なポイント
発症後できるだけ早く(48時間以内が理想)治療を始めることで、聴力が回復する可能性が高くなります。
治療方法
- ステロイド薬の投与
- 血流改善薬
- ビタミン剤
- 安静
外耳道閉鎖や耳垢栓塞
その他、以下のような物理的な問題による難聴も、適切な処置で改善します。
- 耳垢栓塞 → 耳垢を取り除くことで改善
- 外耳道異物 → 異物を除去することで改善
- 外耳道炎 → 炎症を治療することで改善
このような場合、「早く気づく」「早く受診する」ことが、その後の聞こえに大きく影響します。数日の遅れが、回復の可能性を大きく左右することもあります。
治らない(治る可能性がない)難聴
一方で、内耳や聴神経など、音を感じ取る仕組みそのものに原因がある難聴は、現時点の医学では元の聴力に戻す治療が難しいとされています。
感音性難聴
どんな状態?
内耳(蝸牛)や聴神経に問題があり、音の信号を脳に正しく伝えられない状態です。
主なタイプ
- 先天性難聴 → 生まれつきの難聴
- 遺伝性難聴 → 遺伝子の変異による難聴
- 進行性難聴 → 徐々に聴力が低下していく難聴
- 後天性感音性難聴 → ウイルス感染や薬剤などが原因
我が家の長女とうこ、次女そらも遺伝性の感音性難聴です。「治らない」と聞いたとき、正直とてもショックでした。
わたしが子どもの新生児聴覚スクリーニング検査でリファーとなったときの体験談については、こちらから読むことができます。

なぜ治らないのか
感音性難聴が治りにくい理由は、以下の通りです。
- 内耳の有毛細胞(音を感じ取る細胞)は、一度壊れると再生しない
- 聴神経の損傷は修復が非常に困難
- 現在の医学では、これらを元に戻す治療法がない
将来的には再生医療などで治療法が開発される可能性もありますが、現時点では「治す」のではなく「補う」「支援する」という考え方が主流です。
子どもの難聴が「治らない」と言われたときに知っておいてほしいこと
「治らない」という言葉を聞くと、この先ずっと聞こえないままなのでは、言葉は育たないのでは、と不安になるかもしれません。私も、どうしよう、どうしようと頭の中がいっぱいでした。
診断がついても子どもは変わらない
そんなとき、夫に言われた言葉があります。
「昨日のとうこと今日のとうこ、何か違うの?何も変わらないでしょ?」
その言葉に、はっとしました。診断がついても、娘そのものが変わったわけではなかったのです。
「治らない」≠「何もできない」
多くの保護者が誤解しがちなのですが、「治らない」ことと「成長できない」「言葉が育たない」ことは別問題です。適切な支援があれば、難聴があっても子どもは確実に成長していきます。
子どもの難聴と補聴器や人工内耳による支援
内耳性の難聴など、治らない難聴の場合でも、支援によって「聞こえる力」を育てることはできます。
補聴器とは
残っている聴力を最大限に活用して、音を増幅して聞こえやすくする装置です。
人工内耳とは
内耳に電極を埋め込み、直接聴神経を刺激することで音の情報を脳に届ける医療機器です。重度の難聴でも、音やことばを聞き取れるようになる可能性があります。
重要な考え方
補聴器や人工内耳は「治療」ではありませんが、生活の質や学びの可能性を大きく広げる支援です。眼鏡と同じように、「聞こえを補う道具」だと考えるとわかりやすいかもしれません。
参考情報
人工内耳について詳しくは、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の人工内耳Q&Aをご覧ください。
トータルな支援が子どもを育てる
補聴器や人工内耳だけでなく、以下のような総合的な支援が大切です。
さらに、家庭や学校での配慮、視覚的なサポート、周囲の理解が合わさることで、子どもは自分の力でコミュニケーションを育てていきます。
治らない難聴の娘が2人いる我が家の今
トリケラ家の長女と次女は先天性・遺伝性の感音性難聴、つまり「治らない」タイプの難聴です。補聴器や人工内耳、家庭や学校での支援を通して、娘たちは今、自分の力で音を聞き取り、言葉を育てています。
保育園でお友達と遊び、小学校で勉強し、家族と会話を楽しんでいます。もちろん、聞こえにくさによる困りごとはありますが、それは支援や工夫でカバーできることばかりです。
「治らない」イコール「何もできない」ではありませんでした。
難聴を「治る・治らない」で終わらせないために
どちらの場合も「早期」が大切
子どもの難聴は、原因によって治る場合も、治らない場合もあります。
でも、どちらの場合でも共通して言えるのは、早く知ること、早く支援につながることが大切だということ。
治る可能性がある難聴の場合
- 早期治療が聴力回復の鍵
- タイミングを逃すと回復が難しくなることも
- 少しでも異変を感じたらすぐに受診を
治らない難聴の場合
- 早期支援が言葉の発達を支える
- 聴覚の刺激は早い時期ほど効果的
- 早く始めるほど、子どもの可能性が広がる
参考情報
早期発見・早期支援の重要性については、厚生労働省の新生児聴覚検査についてのページで詳しく説明されています。
こんな時は早めに受診を
以下のようなサインがあったら、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
- 呼んでも振り向かない
- テレビの音を大きくする
- 聞き返しが多い
- 言葉の発達が遅れている
- 発音が不明瞭
- 片耳だけを向けて聞く
まとめ|治らなくても支えながら伸ばしていく
子どもの難聴は、原因によって「治るもの」と「治らないもの」があります。外耳・中耳の問題は治る可能性が高い一方で、内耳・聴神経の問題は現在の医学では治すことが難しいとされています。
ただし、治らなくても補聴器や人工内耳などの支援で「聞こえる力」は育てることができます。そして何より大切なのは、治る・治らないに関わらず、早期発見・早期支援が最も重要だということです。
けれど、治らなくても、成長が止まるわけではありません。
「治らない」ではなく、「支えながら伸ばしていく」。それが、今の時代の子どもの「聞こえ」との向き合い方だと、私は思っています。
もし子どもの聞こえに不安を感じたら、まずは耳鼻咽喉科への受診を。早めの相談が、お子さんの未来を支える第一歩になります。
