オノマトペってなに?難聴児にどう届く?基本から考えることばの話
今日はオノマトペについての解説記事だよ!
「ドキドキ」「ふわふわ」「ゴロゴロ」。
こうした、言葉を聞いて、意味を考えなくても情景が浮かぶ——
そんな言葉をオノマトペといいます。
育児や日常の声かけの中で、オノマトペはよく使われます。
とくに、ことばの説明がむずかしい場面では、「伝えやすい言葉」と感じる方も多いのではないでしょうか。
実際に、わたし自身も療育の場で、言語聴覚士さんからこう言われていました。
オノマトペをたくさん使って話しかけてあげてくださいね
専門家からそう言われると、「やっぱり意味があるのかな?」と感じますよね。
では、難聴児にとってオノマトペは、実際にどう届いているのでしょうか。
この記事では、オノマトペの基本的な考え方を整理しながら、難聴児との関わりの中で、どう受け止めればよいのかをやさしく考えていきます。
- オノマトペは、難聴児にとって「自動的に伝わる言葉」ではないが、意味を考えるための手がかりになることがある
- 「伝わりやすい」と感じられるのは、音そのものよりも、動きや感覚、目に見える状況と結びつきやすい言葉だから
- 大切なのは、オノマトペを正解にすることではなく、難聴児とのやりとりを始める“入口”としてどう受け止めるか
オノマトペってなに?
オノマトペとは、音や動き、感覚、気持ちなどを、言葉で表した表現のことです。
たとえば、
- 「ワンワン」「ドンドン」のように実際の音をまねした言葉
- 「トコトコ」「ゴロゴロ」といった動きの様子を表す言葉
- 「ドキドキ」「ワクワク」のような気持ちや感覚を表す言葉
これらはすべてオノマトペに含まれます。
オノマトペは「音の言葉」だけではない
オノマトペというと、「音を聞いて、それをまねした言葉」というイメージを持たれがちです。
しかし実際には、必ずしも“聞こえた音”だけを表しているわけではありません。
たとえば、
- トコトコ(歩く様子)
- ふわふわ(触った感触)
- しーん(静かな状態)
これらは、見たり、感じたりすることで理解できる表現です。
そのためオノマトペは、耳からの情報だけでなく、視覚や体感と結びつきやすい言葉だと言えます。
子どもの言葉の発達とオノマトペ
オノマトペは、多くの子どもが早い段階から使い始める言葉でもあります。
まだ文で話す前でも、「ワンワン」「ブーブー」「ゴロン」といった一語で、状況や気持ちを伝えようとする姿が見られます。
これは、オノマトペが
- 音が短い
- 意味と場面が結びつきやすい
という特徴を持っているためだと考えられています。
「説明」より「共有」に近い言葉
オノマトペは、何かを詳しく説明する言葉というより、感覚や状況を一緒に共有するための言葉です。
「ゆっくり歩いてね」と説明する代わりに「トコトコだよ」と伝える。
そこには、正確さよりもイメージの伝わりやすさが重視されています。
オノマトペは、なぜ「伝わりやすい」と感じるのか
オノマトペが「伝わりやすい」と感じられるのは、特別な魔法があるからではありません。
いくつかの言葉としての特徴が重なっているためだと考えられます。
情景が一瞬で浮かびやすい
オノマトペは、言葉を聞いた瞬間に場面や動きが思い浮かびやすいという特徴があります。
たとえば
- ドンドン
- トコトコ
- ゴロゴロ
これらは、詳しい説明がなくても「どんな様子か」を想像しやすい言葉です。
文章で説明するよりも、イメージに直接届く感覚に近い、と言えるかもしれません。
情報量が少なく、処理しやすい
オノマトペは、多くの場合、短く・単純な音の構成をしています。
「ゆっくり静かに歩いてね」
よりも
「トコトコだよ」
後者のほうが、
- 音の数が少ない
- 意味が一つにまとまっている
という理由から、聞き取ったり理解したりする負担が小さくなります。
動作や表情と結びつきやすい
オノマトペは、言葉単体で使われるというより、動作や表情とセットで使われることが多い言葉です。
- 「ゴロンしようか」と言いながら横になる
- 「ピタッだよ」と言って動きを止める
このように、言葉と同時に目で見える情報があることで、意味がより補強されます。
これは、耳からの情報だけに頼らない伝え方とも言えます。
「理解させる」より「共有する」言葉だから
オノマトペは、相手に何かを正確に理解させるための言葉というより、今の状況や感覚を一緒に共有するための言葉です。
そのため、
- 説明がむずかしいとき
- 気持ちを言葉にしにくいとき
にも使いやすく、「伝わった気がする」という感覚につながりやすいのかもしれません。
このような特徴が重なって、オノマトペは「わかりやすい」「伝えやすい」と感じられる言葉になっていると考えられます。
難聴児にとって、オノマトペはどう届く?
オノマトペは「伝わりやすい言葉」と感じられることが多い一方で、難聴児にとっても同じように届いているのかは、少し丁寧に考える必要があります。
というのも、オノマトペは
- 音のイメージ
- 体験
- 視覚的な情報
が複雑に結びついて成り立つ言葉だからです。
オノマトペが助けになる場面
難聴児にとって、オノマトペが理解の助けになる場面は確かにあります。
たとえば、
- 動作と同時に使われる
- 目で見える状況と結びついている
- 言葉が短く、意味が一つにまとまっている
こうした条件がそろうと、オノマトペは「今、何が起きているか」をつかむ手がかりになりやすくなります。
- 「ゴロンしよう」と言いながら横になる
- 「ピタッだよ」と動きを止める
このように、言葉と行動が同時に提示されると、聞こえの状態にかかわらず意味を推測しやすくなります。
一方で、自然に身につきにくいこともある
ただし、オノマトペが自動的に理解されるわけではないことも大切な視点です。
オノマトペの多くは、音の響きやリズムと意味が結びついています。
そのため、音の情報に触れる経験が限られている場合、意味との結びつきが弱くなることがあります。
これは「理解できない」というより、結びつくきっかけが少ない、という状態に近いかもしれません。
「聞こえ」だけに依存しない言葉として
ここで注目したいのは、オノマトペが必ずしも聴覚だけに依存する言葉ではないという点です。
- 動き
- 表情
- 触った感触
- 目で見える変化
こうした情報と一緒に使われることで、オノマトペは意味を推測するためのヒントになります。
そのため、「難聴児にはオノマトペが向いている/向いていない」と単純に分けることはできません。
どう使われているか、どんな情報と一緒に提示されているかが、大きく影響します。
大切なのは「使えば伝わる」と思い込まないこと
療育や日常の中で「オノマトペをたくさん使ってみましょう」と言われることがあります。
その言葉には、言葉をシンプルにし、体験と結びつけようという意図が含まれていることが多いと考えられます。
ただし、「オノマトペを使えば必ず伝わる」と受け取ってしまうと、うまくいかないときに戸惑いが生まれてしまいます。
オノマトペは助けになることがある言葉であって、万能な言葉ではない。
この位置づけを持っておくことが、次につながる大切な視点です。
まとめ|オノマトペは“ゴール”ではなく“入口”
オノマトペは、難聴児にとって自動的に伝わる特別な言葉ではありません。
けれど、動きや感覚、目に見える状況と結びつけることで、意味を考えるための手がかりになることがあります。
大切なのは、「オノマトペを使えば大丈夫」と考えることではなく、どう使うのかに目を向けること。
オノマトペは、説明の代わりになる“ゴール”ではなく、ことばや気持ちを理解していくための入口のような存在です。
うまくいく日もあれば、そうでない日もあります。
迷いながら、試しながら使っていい。
その子にとって意味のある伝え方を一緒に探していく中で、オノマトペもひとつの選択肢としてそっと寄り添ってくれる言葉なのかもしれません。
我が家で実際に読んでいるオノマトペたくさんの絵本も、またいつか別記事で紹介するね!



